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進学通信No.75-初芝富田林中学校・高等学校
11
3月
  • 進学通信No.75-初芝富田林中学校・高等学校
  • No.75 . 初芝富田林 . 教育問答 . 進学通信 .

PROFILE
京都・兵庫の私立中学校高等学校の英語科教諭、管理職、大学評議員等を経験。また、公職として全国英語教育研究団体連合会 理事(近畿地区)等を歴任。学校を活性化させ、大学合格実績等をV字復活させる手腕は高い評価を得ている。2018年より現職。大阪初芝学園理事。大阪市教育委員(教育長職務代理)、国際教育学会理事。

「進学校としての復活」「新時代(令和)を代表する新しい学校づくり」という二つのミッションを果たすべく赴任された平井正朗校長のもと、大胆かつ多角的な改革を推し進める同校。その成果の一端は、この春21年ぶりに過去最高となる3名が東京大学に合格するなどの実績にも表れています。その原動力や改革の根底にある教育観、今後の展開などについてお話をうかがいました。

進路満足度100%を目指した学校改革を推進
まず、2018 年度に始動した学校改革のコンセプト“超進学校化”に込めた思いをお聞かせください。

 学校法人立命館と教学連携10年目をエポックメーキングとして、学園があらゆる教育活動を抜本的に見直す学校改革に取り組み始めてから一年余りが経過しました。就任時に課された使命は二つ。一つは、大阪府下を代表する進学校としての確固たる地位を復活させること。もう一つは、大学入学共通テストや新学習指導要領の求める人物像を見すえ、予測困難なグローバル社会に貢献できる新時代(令和)を代表する学校づくりをすることです。

 その実現に向けて掲げた“超進学校化”の意味は、単に偏差値の高い大学の合格実績向上を追い求めるものではなく、また、現状の学力で合格できる大学を選ぶというものでもありません。

目指すのは、生徒一人ひとりのポテンシャルを最大に伸ばし、個々の興味・関心に応じて、「本当に行きたい大学」に挑戦し、合格できる力を身につけるカリキュラム・マネジメントの実践であり、結果として「進路満足度100%」の達成です。

 その背景には、本校が長年にわたって抱えている課題が挙げられます。かつて本校は「南大阪に初富(はつとん)あり」と称され、規律ある生活指導・学習指導を実践する学校でしたが、近年はそうした指導を敬遠する生徒が増えたこともあり、志願者数が減少していました。大学進学実績も低迷してきているにもかかわらず、学校として変わることができずにいたのです。

 そこで従来の面倒見のよさを信条とした学習・進路指導に基づく“ 初富(はつとん)スピリッツ” を継承しつつ、生徒一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すことに重点を置いた教育改革を展開することにしました。

 中高時代は自ら問いを立て学び続け、自己を見つめ直す絶好の機会です。自分は何のために生きるのかという問いに正面から向き合い、将来の夢を育む教育実践に努めています。

初年度に注力されたことは?

 改革を実現するためには、先生方の個々の力量に依存しがちだった教科指導・クラス指導を教職員が一丸となり、“チーム初富(はつとん)”に変容させて取り組むことが肝要です。ですから、そのベースとして不可欠な、スモールステップによる成功体験を積み重ねることと、教職員のモチベーションの向上を第一義としました。コミュニケーションの場として1対1の面談を行い、人となりを知るとともに、学校の方向性を語るだけではなく、教職員一人ひとりの夢にも耳を傾けています。

赴任当初は、驚きの連続だったとうかがいました。

 〝学校の常識・社会の非常識〟が多々ありました(笑)。そしてそのたびに指導・助言するわけですが、改善点は〝報連相〟の定着、校務の効率化から働き方改革に対応するカリキュラムの再編など多岐にわたっています。学習面では進路指導体制の刷新、探究型学習、グローバル教育などの取り組みの精査が挙げられます。また、開かれた学校づくりに向けて、文化祭や修学旅行等、学校行事の見直しから学習指導におけるPDCAサイクルのシステム化、働き方改革に対応する教育の意識改革など、あらゆる角度から課題を抽出し、改善に次ぐ改善を行っています。

 本校の教職員はとても誠実で、真面目に取り組んでくれるので、成果につながるのが早く、明るく楽しい雰囲気の学校に変わってきたとよく言われます。
組織としての指導が大学合格実績向上のカギに
貴校は改革1年目にして、2019 年度大学入試で、合格実績の向上を実現されました。原動力となったのは何だったのでしょうか?

〝個人商店〟の集まりから、タテとヨコのつながりを強化することで組織へと生まれ変わったことですね。カリキュラム・マネジメントによってベクトルを合わせたこと。そして何よりも生徒の頑張り。これに尽きます。

 授業に関しては、授業満足度の生徒・保護者アンケートを年1回から年2回に変更し、経年比較のうえ、各教科などで年間到達目標値を設定。計画・実行・評価・改善のPDCA サイクルを回しています。進路指導については、大学は通過点であり、社会に通用するスキルを磨く場ととらえ、生徒たちに「大学で身につけたスキルを活かして社会にいかに貢献するか」を考えさせることを徹底。大学入試センター試験後の出願検討会として学年全員の教員が集まり、データ分析を行いました。

 東京大学3名(現役2名)は過去最高で21年ぶり、うち1名は推薦入試で合格。学園初の快挙です。この生徒は国際物理オリンピックで銀メダルを獲得した生徒です。また難関国立10大学(東大・京大・阪大・東北大・北大・九大・名大・一橋大・東工大・神大)はじ

め、国公立+医歯薬系は100 名を突破しました。全校体制で取り組み、教員が興味・関心の高まる授業、学力の伸びが実感できる授業、理解度の確認がある授業の重要性を共有した結果、少しずつアダプティブ・ラーニング(生徒個々に適した自律学習法)につなげることができてきました。

 関関同立をはじめとする有名私大の指定校推進枠も増加しています。もちろん、受験回避でなく、本当に行きたい学部学科に進学するためのものだという方針のもと、私と教頭で面談指導を行っています。

進学校復活に向けて、一歩前進したのですね。

 そうですね。ただ前述したとおり、課されたミッションは新時代(令和)を代表する〝学校づくり〟、グローバル社会で活躍できる〝人間づくり〟ですから、受験に対応する学力を身につけることだけに特化しているわけではありません。

 日本の大学入試を振り返ると、“ 1 つの正解” を求める1点刻みの入試を実施し、序列化された学校へ進学することが潮流でした。しかし、科学技術の革新やグローバル化が進み、社会が求める人物像は変容しています。これからは知識だけに頼らず、自ら問いを立て、学び続ける姿勢が思考力・表現力につながり、やがて人生の岐路に立ったとき、世界を新しい視点で見つめ、解決に向けて行動する判断力が不可欠となります。正解のないテーマに対し、“ 納得解”を導くための総合的な背景知識と論理的思考力、課題発見・解決能力を培うことが大切だと考えています。

 たとえば、中1から段階的に取り組む探究型学習や、グローバル教育としての「ロサンゼルス研修」「オックスフォード研修」「エンパワーメントプログラム」。また、今年度から全学年で実施する「朝読」や「ビブリオバトル」、「サイエンスルーム」「イングリッシュルーム」の開設など〝超進学校化プロジェクト〟に向けた新設の5教科推進リーダーを中心とする多くの取り組みが花開くのを楽しみにしています。

平井校長は改革について語られる中で人間力にも触れられましたが、人間力とは具体的に、どのようなものだとお考えですか?

 大切なのは社会に役立ちたいという高い志と、お蔭様でという感謝の気持ちを忘れず、常に自分を律し、地道な努力を続けていくことです。“人は生かされている”と言いますよね。家族や周囲の支えを当たり前とは思わず、常に感謝の気持ちを持ち続けて日常生活を送ることこそが、人としての成長につながると考えています。

 自分を知っている人は、相手を敬うことができます。敬うことができれば、友好的な人間関係が構築でき、さまざまな事象をプラスの方向に向かわせることができるのではないでしょうか。

 着任以来、基本的生活習慣の確立の一助として「あ・じ・み・そ運動」(あいさつ、時間、身だしなみ、掃除)を奨励してきました。時間が許す限り、毎朝スクールバスで登校する生徒を出迎え、校長室は開放しているのですが、生徒の成長が感じられます。

チーム力と学びのレベルアップにまい進
2019 年度からスタートした新カリキュラムの特徴を教えてください。

 最大の特徴は、授業時間数の削減です。平日の7時限授業を6時限授業とすることで時間的余裕を生み出し、個々がアダプティブ・ラーニング(ICT 活用の自律学習)の定着を図ります。授業で大学入学共通テストに対応する5教科の基礎・基本を徹底し、放課後は、5教科で実施する小テストの積み残しを解消するための指名補習や、中3~高3を対象とした外部講師による大学受験対策の「はつとんゼミ」、数学・物理オリンピックに挑戦する「数楽研究会」、苦手意識解消に向けての「MathFriends+」といった自主講座など、到達度に応じた最適学習に取り組める環境を整えています。

ミッション達成に向けて、着実に歩みを進めておられますね。

 2020年度には、中学校のコース再編を行います。これまでは『Ⅰ類』『Ⅱ類』『Ⅲ類』で学び、中高一貫生は中3から、高校入学生は高2から難関国公立大学や医学部医学科を目指す『WillFrontier コース』と、国公立大学や有名私立大学への進学を目標とした『未来創造コース』に分かれていましたが、今後は『S特進探究』(S特)と『特進探究』(特進)の2コース制として再編します。教科横断的な学びのレベルアップを図るという意味で、“探究”という言葉を入れました。生徒に「なりたい自分になれる学校」と感じてもらえる「明るく楽しい学校」を目指したいと思います。

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