What's new / 進学通信掲載記事 / 進学通信No.72-清風南海中学校・高等学校

進学通信No.72-清風南海中学校・高等学校
10
3月
  • 進学通信No.72-清風南海中学校・高等学校
  • No.72 . 教育問答 . 清風南海 . 進学通信 .

PROFILE
1934年生まれ。甲南大学卒業後、1959年、カリフォルニア大学大学院にて経済学を修める。1961年に帰国し、1963年、清風南海学園英語科教員として赴任。学園の創始者 平岡 宕峯先生の「生徒一人ひとりの優れた能力を認め、励ます指導」を基本に、社会に貢献する人材づくりに取り組む。

1963年の創立以来、進学校として着実に実績を積んでいる同校。2013年、創立50周年を迎えたことを機に、校舎のリニューアルと同時に、新たな動きを展開し、注目を集めています。校長の平岡正巳先生に、同校の現状と今後の展開をはじめ、現代社会において中等教育機関に求められるものは何か、お話をうかがいました。

独自の取り組みで『スーパー・グローバル・ハイスクール』に認定
貴校は毎年、難関国公立大学、難関私立大学合格者を多数輩出されています。生徒の学力および目標を実現する力は、どのようにして養っているのでしょうか。

 大学受験を見すえた学力を身につけるためには、中学時代の3年間が一番重要な時期といえるでしょう。この3年間で基礎学力を養い、いかに定着させるかが6年後の結果につながると言っても過言ではありません。

 基礎学力の養成と定着は、毎日の授業がきわめて重要です。これは時代が変わっても同じです。そのため本校では、中1から高3まで“授業第一主義”を徹底して、月曜から金曜までは1時限50分の授業を7限まで、土曜は4限まで行っており、これを6年間続けていきます。夏期休暇や学校行事などもありますが、1年間で1560 コマの授業を行っていることになり、これは公立中学校の約1.5倍の授業時間に相当します。豊富な授業時間を確保しているため、ゆっくり、ていねいに教えることができますし、中学校は本当に力を入れていますね。

 また、英語・数学・国語の主要3教科に関しては、授業のたびに確認テストを行い、目標点に達することができなかった生徒は、各学年のフロアや職員室に設けた学習スペースで、放課後や昼休みなどに補習を受けます。これは、学び残しを見逃さず確実に知識を積み重ねるということに加えて、できないことをそのままにしない学習習慣を身につけるという目的もあります。

大学入試制度改革を目前に控えて、受け身ではない主体的な学びが必要とされていますが、貴校ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

 教員が一方的に教えるのではなく、探究型学習を中心に生徒が互いに意見を交換するなど自主的に学ぶアクティブラーニング型の学習スタイルを取り入れています。このとき、基礎学力が身についていなければ、生徒には「ワイワイとにぎやかな授業だった」という印象だけが残るのではないでしょうか。これでは本末転倒です。アクティブラーニングによる学習効果を高めるためには、基礎学力がとても大切なのです。そのため、本校ではアクティブラーニングに本格的に取り組むのは、基礎学力がある程度身についた高1からとしています。

 本校のアクティブラーニングは、2015 年からスタートしています。きっかけは、2013年に創立50周年を迎えたこと。校舎のリニューアルを行うと同時に、開校から半世紀経ち、「時代に沿った教育を」という思いで、試行錯誤の結果、高校に『スーパー特進グローバルコース』『特進グローバルコース』を設置しました。これらのグローバルコースの対象となるのは中高一貫生で、高1に進学する際に希望者を募り、選考します。

 グローバルコースの目標は、“世界を舞台に活躍するグローバルリーダーの育成”です。グローバルリーダーには、英語の運用力はもちろん、「未来を読み解く力」「世界に発信する力」が求められます。この2つの力は、アクティブラーニングを通じて鍛えられる力なのです。中学3年間で、しっかりと基礎学力と自ら学ぶ姿勢を身につけた生徒を対象としているからこそ、学習効果があると感じています。このグローバルリーダー養成のためのプログラムが文部科学省に認められ、2015 年に『SGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)』の認定を受けました。

段階的な取り組みで大学合格力とともに世界で活躍できる力をつける
グローバルリーダー育成プログラムの内容を教えてください。

 グローバルリーダーにとって英語が自由に使えることは必須条件です。英語4技能である「聞く」「話す」「読む」「書く」力を養うために、海外の人たちとの交流の機会をひんぱんに設け、実践的に学びながら『TOEFLiBT(英語の4技能試験をコンピュータで行う方式) 』で満点獲得を目指します。

 グローバルコースの主軸となるのは、高校3年間を通じて取り組む探究型学習『シナリオ・プランニング』です。これは、エネルギービジネス界において、ほぼ半世紀にわたり世界屈指のメジャー企業であり続けているロイヤル・ダッチ・シェル社が生み出した、未来を描き、創造するために、多様な未来の可能性を考え、論理的思考でより良い道筋を模索する方法論です。高1から段階的にステッアップしながらプログラムに取り組み、無理なく力をつけ、高3で英語での論文作成をします。

 まず、高1では、シナリオ・プランニングを行うために必要な知識と分析力の基礎的な力を養うための『ステップゼミ基礎』があります。『ステップゼミ基礎』には「Societal(社会)」「Technological(科学技術)」「Economic(経済)」「Political(政治)」の4分野のゼミがあり、全員が4分野すべてを受講します。

 高2になると、高1で受講した4分野の中から興味のある分野のゼミを選んで受講します。「Societal」はフィールドワーク演習、「Technological」は太陽電池製作、「Economic」はバーチャルトレード、「Political」は模擬国連演習という発展的な内容になり、グループで高度な探究型学習に取り組みます。

 高3では、同プログラムの集大成の年として、各分野で探究して導き出した“予測する未来”の論文を、最終的に英語で作成します。高校の3年間のうちに、フィールドワークとして、国内外の大学や企業、各種団体の講演会やワークショップも体験します。このように、学校を飛び出して、世界を舞台として活躍するために必要な知識や思考法を体験的に身につけることを大切にしています。

 さらに、ベトナム・フィリピン・シンガポール・アメリカの4カ国5校の各校から生徒2名と先生1名を招いて本校で開催する『SGH 国際シンポジウム』で、作成した論文を発表するプレゼンテーションを行います。『SGH』の認定は、こういった本校独自の取り組みが高く評価された証だと思います。

 また、高校でのアクティブラーニングの取り組みが年を重ねるごとに盛り上がり、生徒のモチベーション向上につながっているため、中学の先生から「基礎学力をしっかり養いながら、中学でもアクティブラーニングを体験してみよう」という流れになりました。現在、理科や社会科の夏休みの宿題を自由研究にして、この国際シンポジウムの際に、研究内容を1枚のポスターにまとめて『ポスターセッション』として発表しています。これは高校から始まる、高度なアクティブラーニングへの準備にもなっています。

グローバル人材の育成について考えておられることを教えてください。

 今、街を歩くと、外国人と出会わない日はないばかりか、コンビニでは多くの外国人が働いています。これまで、異文化理解や外国語の活用は、海外で働く一部の人にとってのみ必要なことでしたが、今やそうとは言えません。生徒自身がこの現状を認識することが、グローバル人材育成の第一歩になるのではないでしょうか。そのため本校では3年前から、外務省管轄の独立行政法人のひとつである国際交流基金を通じて、中国人留学生を1年間受け入れています。彼らは英語はもちろん日本語も流ちょうで、本校の生徒と一緒に授業を受けており、とても勉強熱心です。彼らは日本の大学に進学し、日本の企業に勤務することを希望しているので、ゆくゆくはライバルになるでしょう。生徒たちは、そのような彼らと一緒に学び、過ごすことで、大いに刺激を受けていると実感します。

「日本の文化を守り継承する人に」との思いで一人ひとりの心に宿る宗教心を育む
海外だけでなく、国内でも異文化を背景とする人たちと協働するために、英語や異文化理解以外に必要なことは何だと思われますか?

 グローバルに活躍するときに求められるのは、自分の国の文化を理解していることから生まれるアイデンティティと人間力ではないでしょうか。学園の創始者・平岡宕峯先生は、高野山真言宗大僧正で、日本に仏教を広めた聖徳太子と真言宗の開祖 ・弘法大師に帰依し、「宗教を根幹とした教育を」との思いで本校を設立しました。そのため本校は仏教を教育の根幹にしていますが、特定の宗教にとらわれることなく、一人ひとりの心に根ざす“宗教心”を育てることに主眼をおいています。「宗派よりも信じる心を大切に」ということを教えているのです。本校が示す“宗教心”とは、人の役に立ちたいという奉仕の精神や社会のルールを守るといったことに通じる心であり、他宗教を排除するものではありません。

 このことを生徒に伝えるために、中1・高1で、高野山で修養行事を行い、中2・高2で法隆寺に参拝し、中3・高3では伊勢神宮参りに出かけます。また、クリスマスの時期になると、図書館にクリスマスツリーを飾っています。法事を仏教で行い、年始に神社へ参り、クリスマスも祝う神仏習合は、日本の伝統的な文化であり、日本人の他者との共存の精神に根付いていると思います。

 私は、生徒は菩薩の申し子だと信じて疑いません。戒律を守り、奉仕の精神で自己を高め、人のために働いてほしい。生徒たちが、一生けんめいに勉強して力をつけ、発揮することで、社会に貢献する人になってほしい。自分が幸せになりたいと思うように、他者にもそのように接してほしい。そのための学びの場である学舎として、今後もあり続けたいと思っています。

毎年、4月に中1・高1が高野山で菩薩開戒牒を受ける『高野山修養行事』。菩薩の申し子として、社会の恩、父母の恩など四つの恩を知り、不殺生(生き物を殺さない)、不妄言(嘘をつかない)などの十善戒を護り、困っている人を助けることを誓う儀式。

4カ国の生徒を招き開催する『SGH国際シンポジウム』は、同校独自のアクティブラーニングの集大成。高校生はプレゼンテーション、中学生はポスターセッションで学んだことを発表。
kininarukoushikiwebhekihonjouhouhe