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進学通信No.69-近畿大学和歌山中学校・高等学校
10
3月
  • 進学通信No.69-近畿大学和歌山中学校・高等学校
  • No.69 . 教育問答 . 近畿大学附属和歌山 . 進学通信 .

PROFILE
1954年、和歌山県生まれ。大学卒業後、公立中学で数学科教諭を務める。その後アメリカ・イリノイ大学大学院へ留学し、1983年の開校時に近畿大学附属和歌山高等学校・中学校に赴任。教務部長、教頭、副校長、校長代理を経て2011年より現職。現在も「現場を肌で感じたい」との思いから教壇に立つ。

1983年の開校以来、「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」を校訓に掲げ、豊かな人間性を育む教育を実践する同校。自由な校風のもとで多くの生徒が勉強とクラブ活動を両立させ、進路実現を果たしている進学校としても知られています。2018年に創立35周年を迎える同校の伝統と新たな展開について、校長の山崎 宏先生にお話をうかがいました。

人との関係性のなかで生まれる「判断力」を育むことができる環境
山崎先生は開校時に赴任され、今も数学科教員として教壇に立たれているとうかがっています。生徒たちと接するなかで、一番大切にしたいと思われることは何でしょうか。

 私自身が感じている、本校の持ち味の一つである、「古き良き公立学校」を思わせる自由でゆったりとした雰囲気を維持したいという思いがあります。言い換えると、勉強もクラブ活動も頑張ることができて、あらゆる行事を楽しめる文武両道の学校です。「そんなことは不可能だ」「考えが甘い」といったご指摘を受けることは少なくありませんし、もしかしたら幻想なのかもしれません。実際に、授業時間数が減っている現在の公立学校では、なかなかそうはいかないのが現実でしょう。また私学といえば、何かに特化した学校がほとんどです。でもそのなかで本校は、あえて特化することにこだわらず、ゆったりと過ごせる学校であり続けたいのです。理由は明確です。あふれる情報を取捨選択し、いかに行動するのかを自分で考え判断できる人間を育成することが中等教育の果たすべき役割であり、そうした思考力・判断力は、集団で過ごす学校生活において、さまざまな活動や、人と接することによってこそ育まれるものだと思うからです。

 昨今は「主体的、対話的で深い学び」、いわゆる「アクティブラーニング」が重視されていますが、授業のなかで実践することは難しいというのが持論です。授業では、決められた内容を学習することが第一です。数学では証明問題などで考えることはしますが、それは数学の問題として考えているにすぎません。生徒たちには、クラスや学年、クラブにおける日々のつながりのなかで、思考力・判断力を身につけてほしいと考えています。

多彩な行事の実施や、中学で25、高校で29ものクラブが設置されていることには、そうした思いが込められているのですね。

 行事のなかでも生徒、保護者とも楽しみにしているのが、毎年9月に開催する『光雲祭』(体育祭・文化祭)です。体育祭には、毎年1000 人以上の保護者の方や卒業生が足を運んでくださっています。第2週の月曜から土曜にかけて、文化祭と体育祭のリハーサルと本番を連続して行うため、その1週間は授業が全くありません。文化祭ではクラスでの活動、体育祭では6学年混合で編成されるブロックでの活動となります。先述のゆったりとした校風を維持したいという思いと、生徒・教員ともに9月に疲れが出ることを防止する目的から夏休みを1カ月確保していますが、その頃から準備がスタート。仲間と協力すること、体育祭でブロックリーダーを務めることなどを通じて、自分自身の新たな一面を見出すことができればなおいいですね。

 クラブ活動については、必須だとは思っていません。ただ、頑張りたいと思ったならぜひ入部してほしいですし、勉強と両立しながら続けることは意義深いことですから、思う存分楽しみ、活躍できる環境を整えるという意味で、多くの体育系・文化系クラブを設置しています。特に入部制限はなく、すべての生徒が好きなクラブに入ることが可能です。現在は6割近くの生徒が所属しており、卒業生のなかには体育系クラブに所属しながら勉強も頑張り、東京大学、京都大学といった難関大学へ現役合格を果たすケースもあります。互いに励まし合い、思いやることを通じて、協調性や人間性を磨いてほしいと思います。

日々の授業や補習を通じて生まれる、教員と生徒の絆が進路実現の原動力に
2017 年度大学入試では、約3分の1にあたる184 名の生徒が国公立大学への現役合格を果たしました。

 本校は、進学実績が突出して高いというわけではありませんが、頑張りさえすれば、すべての大学に合格する可能性がある学校であるという自負があります。実際に私がかつて受け持った生徒も、北は北海道の帯広畜産大学から南は沖縄の琉球大学医学部まで、全国のあらゆる大学に進学しています。ちなみにこの2人の生徒は本当に学力が優秀でした。前者は大阪府立大学の獣医学科(当時)も目指せたのですが、北海道の大きな大地で学びたいと、現在もその地で獣医をしています。後者も近畿圏の国公立大学医学部には進学せず、遠く離れた暖かな気候の沖縄の大学に進学し、沖縄で医師をしています。世間的に見れば「もっと上の大学を目指せるのに」と思う人もいるかもしれませんが、あえて自らの強い意志を貫き、現在もその地で活躍している。そのことが、私の心に強く残っています。

 目標を達成できるか否かは、中学入試の結果と必ずしも一致しません。本校の高校の卒業式は早く、1月のセンター試験の3日後に実施していますが、その後も多くの生徒が学校に登校してきます。国公立大学の2次試験や私立大学の試験が終わるまで登校する生徒の数が多い学年ほど、つまり、一人ひとりの生徒と教員とのつながりが深い学年ほど、進学実績が高い傾向にあるようです。ですから生徒たちには、学校での勉強をしっかり頑張ってほしいですし、勉強のペースメーカーとして教員を大いに利用してほしいと思っています。

 そのために魅力ある授業を展開することが肝要ですが、各学年の教員団が同じ指導方法で授業に臨んでいるとは限らないという点が、学習面における大きな特徴です。授業の進め方はもちろん、使用する問題集の選定も各教科担当に裁量が与えられています。学年や教科によっても異なるのですが、少なくとも私自身は、開校当初から現在に至るまで、私なりにベストだと思う問題集を使い、私なりの方法で授業を行ってきました。

 夏休みの補習や勉強合宿も、必ず実施すると決まっているわけではありません。たとえば補習をするかどうかは教科担当が、勉強合宿を行うかどうかはその学年の教員団が決定します。生徒たちの気質や状況に応じて、必要だと判断すれば参加を募りますし、合宿の代わりに学校で補習をしっかりと行ったほうが効果的だという合意に至ったケースもあります。

教員が自分自身のスタイルを貫かれている姿や、生徒にとってベストの判断をされていることが、生徒との信頼関係を築くことにつながっているように感じます。

 熱意が伝わっているのでしょう。生徒と教員の距離は近いと思います。教員の入れ替えがほとんどないということもあり、特に行事の際などに多くの卒業生が学校へ足を運んでくれるのは、その絆の表れと言えますね。今年の文化祭では、私が担任を務めたクラスの1期生が来てくれました。

 また、個性あふれる教員を目の当たりにして、おのずと自分自身の進むべき道を自ら見出そうとする姿勢も培われているように思います。自分が尊敬する教員の生き方、考え方、言葉をヒントとし、進路を決める生徒も多いのではないでしょうか。

 さらに、各教員に裁量が与えられているということで、教員にとっては働きやすい環境であると言えます。そういう雰囲気の良さを、生徒も肌で感じているのではないかと思います。これは私が望む「古き良き公立学校」を思わせる雰囲気そのものです。各教員が資質を高める努力を怠ることなく、生徒たちを導いていくという大前提のもと、この伝統を守っていきたいと考えています。

学校のさらなる活性化に向けて『適性問題』を入試科目に導入

 2018 年の中学入試問題に、『適性問題』を導入されるそうですね。

 従来の入試問題とは異なり、示された図やデータなどをもとに考える力を測る、『適性問題』を導入した入試を実施します。 これまで中学入試に向けては特別な勉強が必要でしたが、この『適性問題』は、たとえば旅人算やつるかめ算といった中学入試ならではの知識量を測るものではありません。いろいろなことに関心を持ち、多彩な考え方ができる柔軟な思考力を見るものです。

 とはいえ、これまでのような中学受験のあり方を否定するものではありません。ただ、同じような環境で勉強してきた生徒ばかりではなく、さまざまな個性や考え方を持つ生徒を迎えることで、生徒はもちろん教員も今まで以上に互いに刺激し合い学び合える環境を生み出し、学校全体を活性化させていきたいですね。

まさに、主体的、対話的で深い学びが自然と実践される場ですね。

 そのとおりです。小学生の人口が減少の一途をたどるなか、社会に必要とされる学校として存続していくためには、進化し続けることが不可欠です。本校は来年で35周年を迎えますが、その節目に導入する、従来とは異なる層に門戸を広げるこの入試を、本校らしい方法でより魅力的な環境をつくる起点としたい。個性あふれる受験生が集まってくれるのではないかと今から楽しみにしています。さまざまな生徒が集う環境のなか、より多くの人、さまざまな体験、多様な価値観に触れることによって、たとえば大学や社会で何か失敗した時にも、やり直すための道筋を自分自身で考え、判断し、行動できる人を育成していきたいと思います。

質の高い授業は、学力とともに生徒と教員の信頼関係も築いていく。

中学・高校の計約1600人を4ブロックに分けて行われる体育祭。行事は新しい自分自身を引き出し、仲間と協力して目標を達成する絶好の機会。

同校は、和歌山県下においては有数の、豊富なクラブを設置している学校の一つ。入部制限もなく、どのクラブものびのびと活動している。ラグビー部やサッカー部など、全国大会で活躍するクラブも。
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