What's new / 進学通信掲載記事 / 進学通信No.66-白陵中学校・高等学校

進学通信No.66-白陵中学校・高等学校
26
5月
  • 進学通信No.66-白陵中学校・高等学校
  • 2016 . No.66 . 教育問答 . 白陵 . 進学通信 .
白陵
PROFILE
1942年生まれ、山形県出身。1964年から兵庫県下の公立高校で国語科の教員として教鞭を執る。途中、兵庫県教育委員会主任指導主事などを務め、2002年、白陵中学校・高等学校に赴任。副校長を経て2010年より現職。

1963年に設立された白陵中学校・高等学校は、毎年、東大・京大・阪大・神大などの難関大学合格者を多数輩出しています。有数の進学校として知られている独自の英才教育をはじめ、設立から今も大切に受け継がれている校風、そして中等教育の課題などについて、校長の斎藤興哉先生にお話をうかがいました。

世の中の役に立つ人になる基礎をつくるため
全生徒がセンター試験を受験
斎藤先生は、兵庫県下の公立高校で校長をされた後、2002年に白陵中学校・高等学校に着任されています。学校によって校風などの違いがあるとは思いますが、公立と私立の違いについて感じておられることを教えてください。

公立と私学の最も大きな違いとして挙げることができるのは、私学には明確な建学の精神があることです。建学の精神には、創立者の思いが込められており、白陵は「英才の育成」を建学の精神として掲げています。

“英才”とは世の中の役に立つ力を持った人という意味です。世の中の役に立つ人を育てるために、校是を「研究と訓練」「独どく立りつ不ふ羈き」「正せい明めい闊かっ達たつ」として、1963年の設立以来、厳しく、ときにはやさしく導き、多くの生徒を育ててきました。

1963年の創立と申し上げましたが、兵庫県は百数十年の長い歴史と伝統と素晴らしい実績のある私学が多数ある地域です。このようななかで設立54年というのは長い歴史があるとはいえません。ところが本校が県内でも有数の進学実績を誇り、存在感を発揮しているのは、「世の中の役に立つ人を育てる」という創設者・三木省吾学園長の熱い思いがあったからだと私は思います。そのためでしょうか、三木先生が教鞭を執っておられた頃の本校を知る人は「とにかく厳しかった」と当時を語ります。宿題の提出を忘れると厳しい叱責はあたりまえ。修学旅行の道中でも教科書を開かせて勉強をしたそうです。また、勉強が遅れている生徒を休日に自宅に招き、ていねいに教え、落第にならないように導いたとも聞いています。

当時の教え子で、教員となり現在母校で教鞭を執っている者がかなりいます。彼らが思い出を語る姿に触れるたびに、三木先生の教育にかける思いと生徒一人ひとりと向き合おうとする深い愛情を感じます。

生徒が中心となって開催される『文化祭』は、全校生が楽しみにしている学校行事の一つ。有志による演技披露などもあり、大いににぎわう。準備も片付けも全員で力を合わせて行うことで、教科書ではわからないことが学べる。

大学合格が目標ではない生涯学び成長し続ける
人物を育むための教育改革
1998年から中学校で女子生徒の受け入れが始まりました。貴校の教育改革は、この頃から始まったのでしょうか?

本校が教育改革に本格的に取り組み始めたのは、1994年ごろからです。なぜ教育改革が必要になったかと言うと、いい大学に合格させるだけの教育が、いわば壁にぶつかっていたからです。1992年には、30人もの生徒が東大合格を果たしています。しかしそういう中で、大学生になった卒業生が母校にやってきて、「中高時代は優秀だったのに、大学で留年したり、伸び悩む学生が増えている」と言うのです。その話を聞いた教員たちが「このままではいけない」と奮起して今までの教育のあり方を見直し、改革に乗り出したのです。

教育改革以前は、教え方に余裕がなく「勉強はできるまでやらせる」という白陵流のスパルタ教育が基本でした。しかし、教育改革によって国語では表現の時間を設け、理科は学校周辺の豊かな自然を生かして生物の観察や実験を行い、社会では姫路市や加古川市の歴史や文化などの調べ学習に力を入れるようになりました。教科書から離れて体験をしたり、生徒が自由に考える時間をつくったのです。

修学旅行先が北海道からロンドンに変更したのもこの頃です。制服も一新して「新しい白陵」をアピールしました。ですから本校の教育改革は、1994年から始まったといえるのです。

教科指導で先生方が心がけておられることを教えてください。

本校の教員は、教科学習は、知能技能の習得とともに、ものの見方や考え方を培うためのものとして捉えています。
また本校では、志望大学の学部が文系であっても、高1では物理、化学、生物をやりますし、数Ⅲまでしっかり学びます。理系も同様で、3年間漢文を学びます。このような授業で、勉強は大学合格を目指すためだけのものではないことを伝えています。

私の担当教科は国語です。漢文を教えていたとき、高3の生徒が「先生、漢文は学校の勉強でしか使わないですよね」と言いました。私は「漢文を学ぶことは、正しい文体を学ぶことだよ。将来、
君が社会に出たとき、文章を書かずに仕事ができますか?正しい文体で文章が書けない人が信頼されると思いますか?」というふうに応えました。教科のなかに、ものごとの本質があることを伝えたかったのです。後にその生徒は、京大の文学部に進学したのですが、私が言いたかったことが伝わっていると信じています。

高3生全員が、センター試験を受験するとお聞きしています。その理由を教えてください。

志望大学が私立大学であっても、センター試験受験は必須にしています。センター試験で結果を残すには、広く学ばなければなりません。世の中の役に立つ人は、幅広い知識と深い洞察力を持っていなければならないとう観点から、本校はこういうやり方をずっとしてきました。中高時代に、得意不得意に関わらずバランスよく学ぶことはとても大事なことだと私は思います。

また、これまでの経験で、「皆でセンター試験を目指そう」と言われたときに、「よしやるぞ」と思えるような素直な心を持っている生徒は伸びる生徒だと思います。すぐに「できない」「したくない」と思ってしまうのは「どうすればできるのか」「どうすればやる気がでるのか」を自分で考え、工夫する力がないからです。私は「素直さは頭の良さだ」と思っています。「皆でセンター試験を目指す」という環境のなかで、生徒たちは不得意科目を克服したり、得意な科目をさらに伸ばしたり、さまざまな経験をします。

また、偏ることなく教科に取り組むことは、教養を広げる糸口になると思います。将来、どのような仕事に就いたとしても、自分の知らない分野のことを聞いたときに、「聞いたことがないからわからない」で済ませるのではなく、「この分野は、他のどの分野と関係があるのか」と推測して、何をどのように手繰っていけば理解できるのかがひらめくのではないでしょうか。そのような力を持っている人は、探究心旺盛で、生涯学び続けられる人だと思います。そのような力を育むためにも若く柔軟な中高生時代に、偏ることなく学ぶ経験をすることは大切だと思います。生徒は純真ですから、「勉強は大学に入るためだけにするもの」という姿勢を見せてしまうと、教科や勉強の本質といった大切なことを学ばなくなるのです。

毎年、2月に開催される『全校柔道大会』。「この大会では、全員が体育の授業で練習した形(かた)も披露します。卒業時には申請すれば黒帯がもらえるので、女子生徒も多数、申請しています」

勉強も部活動も学校行事も全力で取り組む校風の中で力を発揮する喜びを知る
東大、京大、神大への高い進学実績があるだけでなく、部活動もさかんですね。

本校の生徒たちはもともと優秀で、小学校時代から真面目に中学受験に取り組んできた子たちばかりです。受験勉強をしながら「白陵生になったら、部活動を思い切り頑張りたい」という思いを持って入学してくるのです。ですから、特に部活動を推奨しているわけではないのですが、中学生は意気揚々と部活動に励んでいます。2つの部を掛け持ちする生徒もたくさんおり、高校生になっても部活動を続ける生徒は、単純計算で約9割にものぼります。

特に強いのは柔道部です。最近では、81㎏級の県大会の試合で優勝を果たし、国体の代表チームのメンバーとなって上位に入った生徒もいます。

また、学校行事もさかんです。 先述の柔道部が審判を担当し、全 校生で競う『全校柔道大会』は白 陵の特徴的な行事の一つでしょ う。すべての生徒が授業で柔道に 取り組み、それが毎年続くわけで すから、卒業する頃には申請すれ ば皆が黒帯をもらえるようなレベ ルになっているのです。

他に盛り上がるのは、9月に開催される『運動会』『文化祭』です。運動会は全体行進の練習を何度も行います。体育科の先生が指揮をとって全校練習、学年練習など、実にしっかりと練習します。昨年、運動会でフォークダンスをしたのですが、男女とも楽しそうでしたし、生徒が考えた「縄跳び大会」もにぎわいました。

運動会が終わると1週間後には文化祭が開催されます。文化祭の企画、運営を担うのは生徒たちです。文化部の中でも特に人気の生物部・化学部は、複数の教室を展示会場にし、見学に来た小学生に、部員が一生けんめい解説します。吹奏楽部も活躍して、日頃の練習の成果を発揮します。

記念棟では、クラスごとの演技披露をはじめ、有志によるダンスや劇もあります。ピアノが得意な生徒はピアノ演奏を披露するなど校内は活気に満ちあふれます。

運動会も文化祭も、半月以上、しっかり練習や準備を行って開催するのが白陵のルールです。どんなことでもしっかり準備することの大切さを教える貴重な機会だからです。このような準備期間が持てるのは、普段の1日の授業が、月曜は1時限50分授業を7回、火曜から土曜までは1時限60分として6回の授業を基本としており、少人数制で学び残しがないようにていねいに指導しているからこその余裕があるからなのです。

中高時代は多感な世代です。 問題行動のある生徒は、どのように対処するのですか?

携帯電話をうっかり持って来てしまったというときでも、わかっているけれど持って来たという場合であっても、それは結果としては同じことです。どんな理由であれ、ルールが守れないときは、何かしら心に隙間があるときだと思います。本人と保護者を校長室に招き「たまたまだったかも知れないが、見つかったことは、君にとってよかったんだよ」という話をします。その後、生徒に反省文を書かせるのですが、私は国語の教師ですから文面を読めば、本当に反省しているかどうかはすぐにわかります。生徒は賢いので、そこを読み取れずに見逃してしまうと、もう何を言っても心に響きません。私も真剣勝負です。生徒の心の隙間がどこにあるのかを読み取り、そこを指摘するとドキッとしたような表情になります。

また、家庭環境も踏まえて、保護者と話をしなければならない場合もあります。そのようなときは、生徒のことを第一に考えて一緒に見守り、育てましょうと伝えます。

中等教育の課題と、貴校の今後についてお聞かせください。

教育は、限られた時間の中で最大限の効果を求められるものです。そのため、教育は時間との闘いといえます。限られた時間の中で教科学習はもちろんのこと、教科書だけでなく実際に体験すること、感性を磨くこと、本を読んで視野を広げること、基本的な生活習慣を身につけることなど、中高時代にしなければならないことと、してほしいことがたくさんあります。どんなことが生徒の心に火をつけるかわかりませんので、さまざまな経験を積んでほしいのです。そのため、生徒たちは忙しい毎日を送っています。昔と比べて子どもたちはどことなく弱くなっているように思いますので、いかに教えるか、いかに育てるかが課題になっていると感じます。本校の歴史はまだ54年です。今後70年、80年と歴史を重ねながら、その時代に求められる教育のあり方を模索し、実践して、世の中の役に立つ人物を育てたいと思っています。

学校情報