約30年前。近年のように、生徒の語学力や国際理解の重要性が叫ばれ始める以前。そんな時代に、いち早く留学生受け入れや英語コース創設を先行するなど、積極的な国際教育への姿勢で知られてきた同校。「2020年に迫る大学入試制度改革も、日本におけるグローバル人材の育成不足への危機感から起こった側面がありますが、それを見すえつつも、もっと自由に本校らしい国際教育を広げていきたい。それが『KRiP』の始まりです」(岡田万里校長)
『KRiP』とは、同校独自の新・教育プロジェクト『。KobeRyukokuinnovationProject』の略称で、これからのグローバル社会に必須とされる思考力や創造力、主体性や問題発見・解決能力を育むため、自由な発想で教育プログラムを創っていこうというもの。既成の枠や教科・ジャンルに捉われない新しい教育を、次々と束ねる(クリップする)ように、学校全体の教育財産として創り上げたいという思いが込められています。最初は「もっと良い授業を行いたい!」と考えた有志の先生方のアイデアで始まった取り組みですが、次第にほかの先生方や生徒たちにまで広まっていったといいます。
『KRiP』で最も重視されているのは、留学など金銭的負担の多いプログラムには参加できない生徒にも、平等にその学びが提供されること。そして、山積するグローバルイシュー(世界的社会問題)に対し、生徒が当事者として問題意識を抱き、かつそれらを解決できるような力の素地を養うこと。そのために役立ちそうなことなら何でもやってみようという精神で、教科を横断したり、クラブ活動の一環として取り入れたり、近隣他校と連携して活動したり。その学びのフィールドがどんどん広がっていくのが特徴で、まさにクリップされた“学びの束”なのです。
例えばJVC(ボランティア部)内の活動として行っていたネパールへの文具支援を学校全体にまで広げたこともありました。その下地として、“時事力”を測るニュース検定へのチャレンジを利用し、社会への興味喚起もしました。その結果、ネパールに強い興味を抱き、単身ネパールへ飛んだ生徒もいました。また、ネパールは日本と同じ仏教国でもあることから、同校の母体である仏教に興味を持ち「学校の講演でお坊さんの講話を聴きたい」と提案する生徒も。
他にも、「チャイムが鳴らない日を作り、自分でタイムマネジメントできるようにしよう」「他校と共同で社会問題の調べ学習をしたい」「学んだことをスピーチやディベートで発表しよう」など、その広がりはとどまるところを知りません。とにかく、先生と生徒が思い思いに、「これ!」という学びを次々と形にしていく、まさに真の“アクティブ・ラーニング(能動的学習)”と言えるでしょう。同校の学びの“KRiP(クリップ)”はさらに厚みを増していきそうです。
「KRiPの根底にあるのは授業の質改革。知識 の応用力が問われる時代ですが、まずは知識 習得の場となる授業があってこそ。その改善こ そ究極の改革なのです」(岡田万里校長)