昨年度より、教室にWi-Fi環境を整備し、高校でi Padを使った情報通信技術(ICT)を取り入れた教育を行う同校。今年度からは、中学でも1人1台のiPadを導入し、生徒の発達段階に応じた6カ年一貫でのICT教育を実践しています。
大きく変わったのは、紙媒体のデジタル化。学校からの連絡や配布物は、校内ポータルサイト『サイバーキャンパス』で配信し、保護者もPCやスマートフォンでその情報を受け取れます。授業では、授業支援ソフト『ロイロノート・スクール』を使って、データ化された教科書や動画などを電子黒板に表示します。これにより生徒が教科書を見たり、板書に追われたりすることなく、顔を上げて話を聞くようになりました。また、各生徒の解答はiPadからリアルタイムで先生の元に送信されるので、今まで以上に積極的な授業参加を促すことができます。クラスメート同士で解答を比較してグループ学習やディスカッションを行い、主体的に授業に参加することで、思考力・学力を高めていくのです。
「調べて考えたことを相手に伝えよう」をテーマにした中2国語のグループ学習。
漢字の意味も英単語も辞書検索で簡単に調べられるので、授業がスピーディーに進む。
教科書の内容はすべて電子黒板に映し出される。例えば英語の授業ではネイティブの音読を聞き、スペルを確かめながら復唱していく。
iPadは有害サイトのアクセスを制限するフィルタリング機能付き。生徒たちの自主性を尊重しながら学びの世界を広げます。
iPadを使った授業の一例として、中1理科では、巨大津波の原理を学びます。先生が「ある小学校が全児童を無事に避難させられたのはなぜだと思う?」と問うと、文字だけでなくイラストも交えた生徒の考えが次々と電子黒板に表示され、生徒たちの目は釘づけに。自分の答えを指しながら、「地下にこんなシェルターがあったからです」と説明する生徒には、他の生徒たちが「地震でつぶれたらどうするの?」「食糧はどこから運ぶの?」など、自由に意見をぶつけます。「正解は津波が来たら高台に逃げる訓練を常にしていたからだよ。では大阪で巨大地震が起こったら、津波はどの辺りまで来るのか本校周辺の防災マップを探してみよう」と先生が言うと、生徒は一斉にiPadで調べ始めました。
「文章もイラストも描けるので考えが伝えやすい」と生徒。
先生のiPadには生徒が今、何をやっているのかが表示されるので、一人ひとりに応じた指導が可能。
「理科で大切なのは実生活の中で興味・関心を持つこと。気になることをiPadですぐに調べられるので、解決すればまた新たな疑問へと思考がつながり、学習意欲も向上していくのです」(理科・後藤友彦先生)
各自のiPadに表示された問題の答えを書いていく。「最初は戸惑ったiPad操作も慣れたら簡単」と生徒。
「日本文化のガイドブック作り」(中3国語)で、編集や紙面構成にチャレンジ。
真剣に取り組む生徒の姿からは、知識を理解して終わりにするのではなく、自ら考え、学ぼうとする同校が目指すICT教育の成果が出ていることを実感しました。
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自分の意見や考えをiPad上でクラスメートと共有して「他の人の良いところはどんどん盗もう」と言っています。しかし、必ずそれについて相手の顔を見ながら実際に話し合うのが基本です。
社会に出れば人の話を聞くことが多くなるので、中1の段階から、相手の話の中で何が重要なことなのかを理解し、的を射た質問ができるような練習をしています。
(取材・文/大松有規子 撮影/テラサカトモコ)