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進学通信No.64-金蘭千里中学校・高等学校
02
4月
  • 進学通信No.64-金蘭千里中学校・高等学校
  • 2016 . No.64 . 授業見聞録 . 進学通信 . 金蘭千里 .

「教育にもいろんな形はあるでしょう。ただ、学校、特に本校に求められる存在意義は、やはり学力の定着であると考えます。そしてその中核にあるのが授業とその質です」
と力強く語るのは、理事長兼校長の辻本賢先生(写真)。2020年の大学入試制度改革などをふまえ、知識の応用力を磨く教育が注目を集める昨今ですが、辻本先生はこうも言い切ります。
「知識の応用はもちろん大切です。ただそのためには、知識そのものがないと始まりません。定着した知識をどう応用するかは生徒次第であり、やはり根幹は、まず基礎知識・基礎学力です」


 同校が創立以来50年にわたって続けているのが『20分テスト』。
一般的な中間・期末テストを廃し、1日1科目、毎朝授業の開始前に実施する20分間のテストです。
 中間・期末テストのように数カ月に1度のテストでは、どうしても試験範囲が広くなり、学習への意欲や質が散漫になりがちです。しかし、こうして毎日行えば、日常の学習理解度を短期的かつ確実に振り返ることができ、積み残しを作りません。

 ただ、そうした生徒側のメリットだけが、このテストの本質ではありません。先生方の授業改善にも直結しているのです。
 先生方は、わかりやすい授業で知識を与え、それを定着させることを意識してテストの作問も行います。単に生徒の習熟度を測るだけでなく、授業がテストにつながり、そしてテストが次の授業につながる、そんな「授業ありきのテスト」。生徒が「勉強できているか」と同時に、先生がきちんと「授業をできているか」を確認するためのテストなのです。


テストが始まると教室には凛とした雰囲気が漂う。生徒たちだけでなく、先生にとっても真剣勝負の場だ。こうした空気が毎朝流れる、これもまた同校ならではの風景だろう。

同校では「生徒にしっかり勉強させたければ、まずは先生がしっかりしよう。先生は人間として手本となる姿勢を示すことも当然ながら、授業の質を常に高めるべきだ」という、教育者としての誇りと責任を非常に大切にしています。辻本先生が「本校の中核は授業」
と言っているのもその表れです。
「毎日テストがあるのは生徒にとっては大変でしょうが、これだけのペースでテストを作成する教員たちも大変な労力です。しかも、それを常に授業と連動させ、質を高めていかないといけないのですから。しかし、今後もやめるつもりはありません」(辻本先生)
もはや同校の代名詞とまで言えるようになった『20分テスト』。今後も研鑽を重ね、進化・深化を続けていくそうです。


今は大変でも、その効果は近い将来必ず表れる


テスト開始直前まで、教科書や問題集を読み返す生徒たち。互いに問題を出し合う生徒や、静かに心を落ち着けて集中を図る生徒もいる。

『20分テスト』は、1日1科目、5教科10科目で2週間が回る仕組み。一般的な定期テストと比べると、約3分の1の範囲で各教科の試験が行われることになるため、より深く学力が定着します。
テスト開始は8:35からで、生徒は8:30までに入室。開始までは、テスト対策としてギリギリまで復習するのも、ゆっくりとリラックスするのも自由です。ただ、試験用紙が配られ、いよいよとなったときには、教室の空気が一瞬で変わります。先生の「では、はじめ!」の声と同時に、伏せられたテスト用紙を裏返し、いっせいに勝負開始。教室には、ただカリカリという鉛筆の音だけが響き渡ります。

こうしたテストが毎日あることは、生徒にとって決して楽なことではありません。しかし、卒業生などは口をそろえてこう言うそうです。
「毎朝テストがあるからこそ良かったと思う。大学生になったとき、学んだことをすぐに復習する習慣が自然と身についていたことに気付いた。周囲の友人を見ていても、その違いは明らかだった」
また、問題は単に暗記力を問うだけのものや、選択式で「運が良ければ正解できる」ような問題を極力排除。教科にもよりますが、筆記式や論述式の問題を多用し、いわゆる小手先の試験テクニックでは対応できない、本質の理解がなければ解けない作問を工夫しているそう。そんな先生方の努力も、着実に生徒の学力定着に奏功しています。


テストが終わると、それまでの張りつめた表情も一転。答案回収と同時に先生に質問したり、友達同士で答え合わせをしたりと活気があふれる。


 

 学校は「塾」。独自の理念に基づいた、誇り高い人間教育の場として 

教育理念や建学の精神を大事にし、それに沿った教育を行うのは私学の大きな特徴ですが、同校では、学校を「塾」と称する独自の思想を持っています。これは建学当時、安保闘争の後で学校の在り方が大きく変革し、生徒から先生への尊敬心が崩れてきていた時代に、もう一度、凛とした人間教育に立ち返るべきではないかという問題意識、教育の理想に起因するもの。そのため、同校の教員には常に高い資質や人格が求められ、生徒の模範たる大人であるよう今も常に研鑽を重ねているといいます。

立派な師がいて、志ある門弟がいる。かつての適塾や松下村塾のような私塾の原点、人間教育の場。そんな場でありたいという決意を込め、「塾」と称するのです。
その一例として同校では、辻本先生は今も教壇に立っています。教えているのは、中3の政治経済。その内容も独特で、例えばオバマ・米大統領のスピーチを英文で出題し、単に和訳させるのでなく「大統領は何を伝えたかったのか」といった文脈や真意を読み取らせるような授業を展開。生徒たちも目を輝かせながら食い入るように授業にのめり込むそう。
こうした独自の理念に基づいた教育姿勢が、生徒の確かな学力や高い進学実績、人格形成にもつながっているのです。


登校してくる生徒たちを待ち、あいさつを交わすのが日課。生徒のことが大好きで、対外的に話すときでも、つい「うちの生徒」ではなく「うちの子」と称してしまうという。

(取材・文/松見敬彦 撮影/中森健作)


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