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進学通信No.64-立命館守山中学校・高等学校
28
3月
  • 進学通信No.64-立命館守山中学校・高等学校
  • 2016 . No.64 . 教育問答 . 立命館守山 . 進学通信 .

主体性と確かな学力

サイエンスマインドを併せ持つ

「地球市民の育成を目指す」

立命館が掲げる建学の精神“自由と清新”に基づき、次代のニーズに応える教育の実現に挑戦し続けてきた同校。開校と同時に文部科学省より『スーパーサイエンスハイスクール(SSH)』に指定され、以来、先進的な理数・科学教育を実践しながら、近年はICT活用教育や高大連携教育にも力を注いでいます。開校10周年を迎えた同校の特徴ある取り組みや展望などについて、校長の亀井且有先生にお話をうかがいました。


伸びしろのある生徒の育成が
大学付属校としての使命

──立命館学園の一員である貴校が、教育を実践するうえで大切にされていることを教えてください。

 本校は2006 年、高等学校の開校をもってスタートしました。ちょうど同年に『立命館憲章』が制定されています。これは立命館学園の関係者が理念や使命を共有すること、またそれらを広く社会に発信することを目的としたものです。本校が教育のベースになるものとして大切にしているのは、憲章の中で「地球市民」という言葉を使って表現されている、「グローバル時代のリーダーを育成しなければならない」という思いです。立命館の建学の精神と教学理念に基づいて実践していくことになるわけですが、本校では、建学の精神にある「自由と清新」の「清新」を、いろいろなことに挑戦していく姿勢と捉え、教育活動に反映していきたいと思っています。

──グローバル人材の育成は国家戦略の一つでもあります。その実現に向けて中等教育が果たすべき役割について、お考えをお聞かせください。

 個人的には、キーワードは“主体性”だと思っています。私は1983年から30年以上にわたり、教員という立場から立命館大学の学生たちを見てきました。その中で強く感じたのが、伸びしろの重要性です。
 伸びしろの有無は、主体性の有無に左右されます。大学では自ら物事に興味を持ったり、自分で問題を解決する手段を考えたりと、まさに主体的な姿勢が求められますが、誰もそのことを教えてはくれません。大学入学までにそうした姿勢を身につけていないために、最初の段階でつまずいてしまう学生もいるのです。
 本校の生徒の90%以上は、立命館大学、立命館アジア太平洋大学に進学します。校長として赴任した時には、立命館学園の付属校として、主体性を備え、それぞれの進学先で伸びる生徒、大学で今以上に活躍できる生徒を育てたいと強く思いました。
 そのために大事にしていることは大きく2つあります。ひとつは、勉強は大変だけれど、自ら頑張って取り組むものなのだということを、当たり前のこととして受け止められるよう導くこと。そしてもうひとつは、知識や技能をしっかりと身につけることです。知識偏重型の教育には限界があります。ただ、知識・技能の量が少ない小さな種は、たとえ主体性があったとしても大きく伸びることはありませんし、途中で枯れてしまうかもしれません。大学で伸びるためのベースとして、主体性とともに、知識・技能をしっかりと養うことが肝要だと考えています。


ICTの活用と高大連携で日本一を目指す!

──大学での学びをリアルに見すえた教育を実践できることは、大学付属校の大きな強みです。前述の主体性や知識の確立に向けて、どのように取り組まれていますか。

 私は本校赴任1年目に、教職員の方に向けて、2つの日本一を取りたいと伝えました。ひとつは、「ICT の活用」です。情報環境を整備し、ICT を活用した授業、放課後学習、家庭学習を通して、主体的な学習者を育てたいと考えました。もうひとつは「高大連携」です。立命館学園には中・高・大・院があります。高3のカリキュラムと大学のカリキュラムをシームレスでつなぎ、知的好奇心を育む高度な学びが得られる、付属校らしい日本一の高大連携を実現したいという思いがありました。

 ICT のほうは情報環境整備を経て、2014 年度から段階的に、1人1台iPad を導入しました。各教科での活用は手探りからのスタートでしたが、教員の尽力により初年度でICT公開授業を実施することもできました。現在は全生徒がタブレットを所有しており、5教科はもちろん、美術・体育・音楽などでも活用しています。自分で問題を発見して調べたり、面白い意見があればクラス全員で共有し、ディスカッションにつなげたり、体育なら録画したフォームを確認して修正したりと、自ら考える・意見を述べる・周囲と協力するといった場面が増えました。


1人1台のタブレット端末導入で授業でも家庭でも、多くの場面で日常的にiPadを活用。

 家庭学習においては、一人ひとりのレベルに応じた問題を自動的に選択し出題するアダプティヴラーニングのシステムを取り入れられたことが大きいと感じています。各自の意欲に応じて、復習やレベルアップに思う存分取り組めるようになりました。疑問点がある場合も先生だけに頼るのではなく、生徒間で「この問題の解き方を教えてほしい」と発信し合い、協働で教え合ったり、学び合ったりすることが可能です。
 導入から3年目を迎え、iPad を活用して学ぶことがスタンダードになりました。本校のICT 教育は、中1からiPad を使ってきた生徒たちが高校を卒業する時にその真価が問われるでしょう。今後は、学力との関係を分析したり、その結果をもとに各単元における最適な活用法をモデル化したりと、一歩先の段階に進みたいと考えています。

 一方、高大連携としては、大学の授業の一部を『AP( アドバンスト・プレイスメント)科目』とし、最大24単位まで、高3が大学生に交じって受講できるようにしました。高度な学びを得られるというだけではなく、志望学部・学科での学びが見えてくることも大きなメリットです。また大学入学後に申請すれば、単位として認められます。
 将来的には、AP 科目を受講することにより、大学1回生で2回生の授業、3回生で卒論というふうに、前倒しで学ぶことができるプログラムの構築を目指します。

──今後の、付属校出身者の大学での活躍が楽しみですね。

  現時点でも、付属校出身の学生は伸びしろがあると言われていますし、各学部自治会の活動に携わったり、クラブ・同好会を立ち上げたり、ボランティアに参加したりと、積極的にものごとに取り組む学生が多いと感じます。
 そうした場面では、付属校の多様な学びの中で培われた、多面的に社会を見る力・経験する力が活きていますね。本校も実地体験を重視しており、高校でインターンシップ、老人保健施設や保育所での福祉実習などの地域連携教育を展開しているほか、医学系・難関国公立大学を目指す『フロンティアサイエンスコース』では、高校で病院実習・ベトナムでの海外研修なども行っています。
 特にベトナムでの研修は、貧困・戦争といった問題を肌で感じ、ベトナムトップクラスの高校に通う生徒たちの志の高さを目の当たりにして、「自分はなぜ大学に行くのか」「なぜ医師を目指すのか」といったことをあらためて考えたり、その決意を固めたりする契機となっています。動機が明確になれば、その実現に向けて持続的・主体的に学んでいく大きな原動力となるはずです。ひいては、社会に出てからも主体的に物事を考え関わっていける、その礎を築くことにもつながればと思っています。


グローバル社会に対応した英語力を育む
新プログラムが始動

──次に貴校ならではのグローバル教育についてお聞きします。まず『立命館憲章』の中にある「地球市民」とは、どのような素養を備えた人物でしょうか。

 本校が目指すのは、サイエンスマインドを持つグローバル人材の育成です。これは単に、サイエンスの分野で国際的に活躍できる人材という意味ではありません。というのも、サイエンスの世界では英語に加えて、数値や公式もグローバルな言語として用いられますが、実はこのことは、理系に限った話ではないからです。経営学や法学を学ぶうえでも、数学の知識は求められます。サイエンスマインドを持つということは、苦手だからといって数学を敬遠するのではなく、受け入れるようにすること。そうなれるよう、文系に進む場合でも理系科目を勉強しなければならないことを認識し、最低限の知識を身につけて卒業してほしいと思います。


また、地球規模でものごとを考える力も大切です。生徒たちが社会に出る頃には、今以上にグローバル化が進み、より困難な問題が散りばめられた世の中となっていることでしょう。その中で各々が自分の利害ばかりを考えて行動していたら、解決には至りません。地球規模の課題を解決することが使命であることを自覚し、自分には何ができるのかを常に考えてほしい。そしていつか、本校で培ったサイエンスマインドを存分に発揮しながら、世の中に貢献してくれることを願っています。

──そうした素養を育むための取り組みについて教えてください。

 大前提となる英語力の向上に向けては、中学から各学年においてペアワークやグループワークを取り入れ、自分の意見を述べたり、班の意見をまとめたりする機会を設けています。加えて帰国子女をはじめ、より高い英語力を身につけたいという生徒に対しては、高校生とディスカッションしたり、留学生と話したりできる『エキスパートプログラム』を実施。もちろん、英語が苦手な生徒に向けたキャッチアッププログラムも用意しています。

 そして前述のサイエンスマインド、地球規模でものごとを考える力を養う場としては、高校で実施しているSSH としての取り組みが挙げられます。研究活動の成果を発表する『アカデミックプレゼンテーション』など内容は多岐にわたりますが、グローバルコミュニケーション能力を磨くこともできる貴重な機会となっているのが、本校主催のワークショップ『水環境探究ワークショップ』で、国内・海外から高校生を招き、国内外混合チームを編成して琵琶湖での調査活動やプレゼンテーションを行います。本校の生徒はホスト役としても動くことになりますから、企画・運営やおもてなしに関わる力も培われるのではないかと思います。その経験を活かして今年度は、開校10周年記念イベントとして『Lake Biwa International Science Fair』を開催する予定です。


琵琶湖を望む環境を生かし、水環境に関するワークショップを開催

──今年から『アカデメイアコース』に、高3の段階で希望進路に応じて選べるプログラムとして、「グローバル」が新設されました。

 国際関係の学部・学科・専攻等への進学を目指すプログラムです。アウトプット能力の伸長を主眼に置き、ネイティブ教員や留学生とともに国際的なニュースを題材としたディベートやディスカッションなどを100%英語で行う『Critical Thinking』、サイエンスの分野で求められる英語、それを使って思考・判断・表現する力を培う授業『Science English』など、高い英語力はもちろん、その先の段階の英語を使って思考・判断・表現する力を身につけられるカリキュラムとなっています。


次代を見すえ、真に必要な教育を実践

──貴校の挑戦する姿勢は、今後も受け継がれていくのでしょうか。

 ひとつの理想があり、それを実現できる可能性があるなら、挑戦する。これこそが立命館スピリッツであり、私学のあるべき姿です。本校はグローバルリーダー育成やICT 活用なども、先がけて実践してきたという自負があります。
 ただ、今の小中学生が世に出る頃、社会はどうなっているのでしょうか。10~20年後、国内労働人口の約半数の仕事がロボットや人工知能に代替される可能性が高いとされています。その中で、環境問題、テロの問題など、数々の大きな問題に対峙していかなければなりません。そのような社会で必要となる力とは?
 特に重要なのは、人間だからこそ持つことのできる、倫理意識、道徳心、豊かな感性、コミュニケーション力といった「人間力」ではないでしょうか。
 今後の中学受験においては、先進的な教育が実践されているか否かに加えて、人間力育成が保障されているか否かが、学校選びの大きなポイントになるのではないかと思います。本校としては、挑戦する姿勢はそのままに、インターンシップ、海外研修といった実地体験を変わらず大切にしていきたい。それらを通じて、今後これまで以上に切実に求められる人間力、不測の事態にも力を発揮できる応用力・対応力を併せ持つ、次代のリーダーを輩出していきたいと考えています。

(取材・文/小河砂綾 撮影/金子直樹)

亀井 且有 先生 PROFILE
1955 年、広島県生まれ。立命館大学理工学部卒業、立命館大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程修了。立命館大学理工学部の助手、助教授を経て、2004 年より立命館大学情報理工学部知能情報学科教授。2013 年、立命館守山中学校・高等学校の校長に就任。


 

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