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進学通信No.63-大阪星光学院中学校・高等学校
25
2月
  • 進学通信No.63-大阪星光学院中学校・高等学校
  • 2016 . No.63 . 大阪星光学院 . 教育問答 . 進学通信 .

自ら学ぶ姿勢を養い

人を思いやる心を育む教育で

世の中に光を照らす人を育てる

毎年、東大、京大を始めとした超難関国公立大学合格者を多数輩出し、進学校として知られる同校は、世界138カ国で約2000の学校を運営するカトリック・サレジオ修道会を母体とする中高一貫の男子校です。「世の光であれ」を校訓として“アシステンツァ(共にいること)”を何よりも大切にすることで、世の光となる人を育てている同校の校長である鈴木英史先生にお話をうかがいました。


サレジオ修道会の教えを基本に「世の光」となる人を育てる

──校訓「世の光であれ」の意味するところを教えてください

 校訓「世の光であれ」は、マタイ福音書5章14・16節に「あなたがたは世の光である。あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい」という一節から抜き出した言葉です。「世の光」とは、灯台のように、あるいは電灯のように、ときにはロウソクのように、周囲を明るく照らす存在を示しています。
 社会を切り拓き、多数の人々の進む道を明るく照らす。身近な人々に希望を与える。一人の人から頼りにされるなど、それぞれ置かれた場所や役割は違っても、私たちは光となって明るく周囲を照らす人を育ててきたのです。
 聖書で「あなたがたは世の光である」と言い切っているのは、「すでに光になっている」という意味ではなく、その〝可能性〟に満ちているという意味です。これは人は誰もが可能性を秘めているという意味でもあります。

──今年で創立66年を迎える貴校の成り立ちと教育理念について教えてください。

 本校は、イタリアを拠点としたカトリック・サレジオ修道会の学校『サレジアン・スクール』の一つとして、1950 年に創立されました。 
 カトリック・サレジオ修道会は、1815 年、北イタリアの貧しい農家に生まれ、苦学して司祭になり、青少年の教育事業に生涯を捧げた聖ヨハネ・ボスコ(以下、ドン・ボスコ)によって設立されました。
 本校の教育理念は「アシステンツァ」です。“寄り添う”“ 共にいる”という意味のイタリア語なのですが、ドン・ボスコは、青少年は周囲の人たちから愛されていると感じることが大切だと考えておられました。
人はどのようなときに「私は愛されている」と感じるでしょうか。どんなときでも見守り、共に過ごし、寄り添ってくれる人がいるとき、愛されていると感じるのではないでしょうか。このようなことから、ドン・ボスコは、「アシステンツァ」をサレジアン・スクールの教育理念として提唱し、この教育理念は世界130 カ国以上にある約2000 のサレジアン・スクールにおいて、今も大切に受け継がれ、実践しています。


合宿は、教科書だけでは学べないことを体験的に学ぶ機会

──貴校は、合宿が多いことでも知られています。寝食を共にする合宿は、教育理念である「アシステンツァ」を体現した取り組みといえるのでしょうか?

 教員はふだんから、学校生活で生徒に寄り添い、生徒が何を考えているのか、何を大切に思っているのかを感じ取るようにしていますが、合宿では、いつも以上に一緒に過ごす時間が長いため、「アシステンツァ」を体現した取り組みと言っても間違いではないでしょう。
 合宿所は、本校の校庭に『聖トマス小崎研修館』を始めとして、和歌山県みなべ町に『南部学舎』、長野県黒姫山に『黒姫星光山荘』と3カ所あり、合宿は中1で入学直後から始まり、高3までの6年間を合計すると約60泊にもなります。
 ドン・ボスコはまた、「青少年が喜びの心を持つように教育しなさい」ともおっしゃいました。喜びの心とは、明るく弾むような心のことです。そのような心は悪いものを寄せつけません。生徒たちは、合宿で生活を共にすることで人を思いやり、心を通い合わせることや未知なることに出会う喜びを体験し、驚くほど成長するのです。


◆写真◆200名を収容できる和歌山県みなべ町にある『南部学舎』は、1学年全員が1週間、共に過ごす。

──毎年、東京大学、京都大学、大阪大学、神戸大学など超難関国公立大学の合格者を多数輩出しておられます。それらの合宿では、補習や志望大学に焦点を絞った受験勉強を行っているのですか?

 そのように言われることが多いのですが、中学時代の3年間の合宿では、補習や受験勉強などは一切しません。
 具体的に、合宿所でどのようなことをするかといいますと、中1の入学後、校庭内にある『聖トマス小崎研修館』で、各クラスから約7名ずつ、約30名が1週間の合宿を経験します。ここでは自主学習の習慣を身につけ、食事の準備や片付け、掃除なども自分たちで行い、朝は合宿所から通学します。この合宿は、これから始まる新しい学校生活や今後行われる長野県、和歌山県での合宿に慣れるための準備のようなものです。
 夏になると長野の『黒姫星光山荘』での5泊6日の合宿に出かけます。リュックを担いで山登りをして合宿所まで行き、雄大な自然の中でキャンプファイアーをしたり、絵を描いたりしながら、先生も生徒もみんな一緒になって、いろいろな話をして過ごします。山のふもとには、小林一茶生誕の地である信濃町があり、一茶の句碑をめぐって俳句を作ったり、町の人たちの協力を得て農業体験をすることもあります。
◆写真◆長野県黒姫山にある『黒姫星光山荘』の合宿でバーベキューを楽しむ生徒たち。黒姫山荘合宿は、2クラスずつで参加。
 秋には和歌山県の『南部学舎』に行きます。ここは目の前に千里の浜が広がり、熊野詣でに関係する神社や史跡が遺るすばらしい場所で、皆のびのびと過ごします。机に向かって「さあ、教科書を開きましょう」という勉強は一切しないのですが、美しい海に行けば、海の生物に出会うため、「これは何?」「なぜ、こんな形をしているの?」といった疑問や好奇心が自然に湧いてきます。
 また、夜空を見上げると、驚くほど星が輝いていますから「どんな星が見える?」「あの星の名前は何?」という話題になるかもしれません。生徒同士で考えたり、ときには先生がヒントを与えることもあるでしょう。それから、冬になると黒姫山でスキー合宿が始まります。このように生徒たちは、合宿を通じて大自然の中に身を置き、身体を動かして、他者と交流をすることで、教科書だけでは学べないことを実体験をもって全身で学ぶのです。

──なぜこれらの合宿が、生徒の学力向上につながるのでしょうか?

 本校では、中高6年間を、3つの時期に分けて考えています。第1期は中1・中2で基礎的な生活習慣を確立させて、基礎学力を養う時期。第2期は中3・高1で、関心のある領域を広げ、教科の枠を超えて知識をつけ、自己適性を発見する時期。そして、高2・高3を第3期として、理系、文系など各自の目標に向かって分かれ、社会における自己の役割を考える時期としています。
 第1期・第2期の学びの土台を作る時期に教室を飛び出して、さまざまな体験をすることで、「なぜ、こうなっているのだろう?」と、ものごとの原理、原則に関心を持ち、積極的に“知の探求”に取り組む習慣が身につきます。教科書に書いてあることを暗記するのではなく、体験を通じて原理、原則に触れ、「だから教科書にこのように書いてあるのか」と理解し、「これはこの分野に応用できるのではないか?」と自ら考えて、試してみることが学力向上につながっているのだと思います。教科書の内容を丸暗記する勉強には限界があるのです。
 話は変わりますが、本校には「物理オリンピック」「化学オリンピック」などを勝ち抜いて、世界大会に出場した生徒が多数います。そのような対策を特別行ってはいないのですが、合宿での体験がきっかけになって、学ぶ意欲が向上しているのだと思います。
◆写真◆入学後、初めての合宿は校内にある『聖トマス小崎研修館』に1週間宿泊。


いつも先生が生徒に寄り添っているからこそ
どんな話もできる

──医学部に進学する生徒が多いようですが、進路指導は、どのようにされているのですか?

進路指導は、保護者の意向も深く関係してきます。「将来は医者になり、社会に貢献して欲しい」という思いを持っておられる保護者が多く、その願いに応えたいという生徒が多いということだと思います。特に、本校が医学部進学を勧めることはありません。
以前、「親は医者になってほしいと言うけど、芸術系大学に進学したい」という思いを持った生徒がいました。担当教員が、その生徒ととことん話をして、「医者になって欲しいというのは、社会に貢献して、豊かな生活ができる人になって欲しいという思いがあるのだと思う。どんな職業に就くかではないと思う。芸術の分野で社会に貢献して、豊かに暮らすことで親の思いに応えれば良いのではないか」
とアドバイスしたことがありました。彼は、東京芸術大学のデザインを学ぶ学部に進学しました。先生と生徒がとことん話し合うことができるのは、普段の学校生活と合宿を通じて“共にいる”とお互いが感じ合っているからこそなのです。

── 2020 年度から大学入試改革が実施されます。貴校では、どのように対応されるのでしょうか。今後の取り組みとともに教えてください。

 入試改革では、知識を応用する力が問われるといわれています。本校で取り組んでいる合宿こそ、そのための力を養う取り組みと言っても過言ではありません。そのため、授業で新しいことに取り組む予定はありませんが、グローバル化に対応するために、ハーバード大学やスタンフォード大学など名門大学に行き、その空気に触れたり、アメリカの高校生と触れ合う機会を作りたいと思っています。語学教育というより、アメリカの高校生たちの豊かなコミュニケーション力に触れることで何かを感じ取ってほしいと思っています。 
 また、ドン・ボスコ生誕の地であるイタリアを訪問する機会も作りたいと考えています。このような取り組みを通じて、これからも社会の光となり、暗所に光をあて、周囲の人の心を温め、生きる力を与える人物を育てていきます。

(取材・文/近藤早智子 撮影/合田慎二)

鈴木 英史 先生 PROFILE
1950 年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。カトリック・サレジオ修道会司祭となり、1991 年から1997 年まで大阪星光学院に赴任。1997 年から3 年間は横浜サレジオ学院へ。2000 年、大阪星光学院に戻り、2010 年、校長就任。「世の光になる」「いつも喜びの心を持って過ごす」が信条。



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