What's new / 進学通信掲載記事 / 進学通信No.62-智辯学園和歌山 中学校・高等学校

進学通信No.62-智辯学園和歌山 中学校・高等学校
22
12月
  • 進学通信No.62-智辯学園和歌山 中学校・高等学校
  • 2016 . No.62 . 教育問答 . 智辯学園和歌山 . 進学通信 .
智辯学園和歌山 中学校・高等学校
高校野球での華々しい実績から全国に名を馳せる同校は、和歌山県でいち早く中高6カ年一貫教育を導入し、全国屈指の進学実績を誇る名門校でもあります。1978年の開校以来、仏教精神に基づく心の教育と、生徒が持つ能力の最大開発を柱とし、リーダーとして活躍できる人材を育成してきました。そんな同校が実践する「不易」「流行」の教育や取り組みについて、学園理事長と学校長を兼任する藤田清司先生にお話をうかがいました。
宗教的情操教育を通じて 素直な心、感謝の心を育む
貴校が教育において大切にさ れていることについて教えてください。

智辯学園が設立して51年目、本校がスタートして38年目になりますが、その教育をひとことで表現するならば、「不易」「流行」という言葉に集約されます。本学園における「不易」とは“愛のある教育”という教育の原点を求め、個人にあっては心の原点に立ち返ることを教育理念とし、“誠実・明朗”という教育目標のもと、各分野で活躍するリーダーを育成するための教育を実践することです。リーダーになるためには幅広い知識や高度なスキルを備える必要があります。また人格者でなければ、リーダーシップをとることはできません。そこで、「もっている能力の最大開発」と「宗教的情操に基づく躾教育」の2つを、特に徹底すべき具体的な目標としてきました。この2つを柱にした不易の教育こそが、生徒や保護者の方から信頼を得る礎になっていると自負しています。とりわけ後者は、本学園における教育全体のベースと言えるでしょう。

「宗教的情操に基づく躾教育」とは、
具体的にどのようなものでしょうか。

昨今、改革・充実の必要性が叫 ばれている道徳教育にあたるもので、主に週1回の宗教の授業と月1回の『感謝祭』を通じて実践しています。
宗教の授業では、命の尊厳、善悪、奉仕の精神、親子の愛や友情、いじめ、いじめをなくす集団づくりといったテーマについて学びます。また全校生徒による感謝祭では、4つの恩に感謝します。4つの恩とは、「父母の恩」、父母以外の友人をはじめ支えてくれているすべての人に対する恩を意味する「衆生の恩」、仏やその教え、教えを伝える方に対する恩を指す「三宝の恩」、自然の恵みに対する恩である「天地の恩」です。宗教の授業や感謝祭では必ず合掌をしますが、それにも意味があり、左手が自分、右手が支えてくれている相手で、この2つが結びつくことで感謝の心になるのです。感謝の心を持つことで、自分や人のために頑張ろうといった気持ちが芽生える。これが、道徳教育の根本だと考えています。

本校は仏教校ですが、あらゆる宗派の家庭から入学してくるのは、宗教の授業や感謝祭をあくまでも道徳教育として実践しているからです。躾教育として自然にそれができるよう継続的に行うことで、素直な心で人の話を聴くことができ、その話を吸収して自分をコントロールし、感謝の気持ちを持って自分や人のために頑張れる生徒を育てる。これが本学園の宗教的情操教育 です。

その成果は、感謝祭での生徒たちのようすから一目瞭然です。般若心経を唱える際は皆が声を出していて、唱えているふりをするような生徒はいません。その後、私から30分ほど、たとえ ば「君たちは生まれながらにして素直な心を持っているが、それを乱すものが周囲にあふれている。心が汚れていたり、よくないことをしていたりするなら、この場でリセットしなさい」といった話をしますが、静かにじっと聴いています。とても素直なんですね。感謝祭には新入生の保護者の方にも一度、必ず参加していただくのですが、まずは生徒による読経の声量に驚かれます。そしてその後の懇談会では、「このような行事があるのは親としてうれしい」といった声をいただいています。


『感謝祭』では、全員で般若心経を唱え、校長先生のお話に耳を傾け、「父母の恩」「衆生の恩」「三宝の恩」「天地の恩」 に感謝する心を育む。

昨今は道徳教育の改革・充実が叫ばれていますが、
貴校ではすでに確立されているのですね。

道徳教育を子どもの成長につなげるためには、学校と保護者が連携することも大切です。

たとえば反抗期は成長の証ではありますが、勉強をあまりしなくなる傾向があるため、いかに短く浅く乗り越えるかが重要になります。このとき大きな効力を発揮するのが、お弁当です。本校には食堂がないため、生徒は毎日お弁当を持参しますが、保護者の方には、反抗期の兆候があらわれたら“強力な弁当”を作ってくれるように お願いしています。「力が入ってるな」ということは、フタを開けた瞬間にわかります。そしてある日、はっとします。「偉そうなことを言ってるな」と自分の行動を振り返り、そのままではいけないと自ら気づくのです。振り返るきっかけを与えられれば、反抗期を短く浅くすることができます。同じ目線で言い争ったり、上から目線で説教をしたりするのは逆効果です。「はいはい」と受け流し、何かを通じて気づきを与えてあげてください。そうすれば、反抗期が必要以上に長く深いものにはならないのではないかと思います。

高い目標を持つ生徒同士が互いに支え合い、高め合う
もう一つの柱、「もっている能 力の最大開発」に向けては
どのように取り組んでいるのでしょうか。

主軸となるのは70分授業です。 中1から受験を意識した授業を行っており、40~50分は、センター試験対策として教科書の内容、基礎の定着にあてています。残りの 20~30分は2次対策として、発展的思考力、読解力、記述力などの養成に力を注ぎます。教員が過去問を解いたうえで学年に応じた内容を考えるので、70分を通して生き生きとしていて、生徒も授業が長いとは感じていないことが伝わってきます。私自身は理科の教員として、最先端の研究に触れるなど興味を持って臨める授業を心がけていました。実験などにじっくり取り組めるのも、70分授業の大きなメリットですね。

授業時間が長いと、決められた範囲まで終えられないという状況に陥りがちですが、本校ではそれを防ぐために公立よりも約1カ月多い授業日数を確保しています。70分授業を最大限に活かし、第1志望の大学に合格させることが、進学校である本校の使命だと考えています。

新たな大学入試制度に対応した受験対策として、
新たに導入を考えているものはありますか。

今まで通りレベルの高い70分授業を実践することによって、大学入試改革を含むあらゆる変化に対応できるというのが私の考えです。本校では高2で全課程を終え、高3の1年間は、各自が2次試験に必要な教科を選択して受けるという体制をとってきました。この高3の1年間があれば、たとえば新しい入試制度への対策がより明 確になったときにも、新たなプログラムを導入するといったことが自在にできます。

また、新しい入試制度で重視される思考力などについては、すでに培うための環境が整っているという認識です。現に生徒たちは、教員や先輩からおすすめの問題集や参考書の情報を得ると、それを入手して家庭学習で取り組み、わからない箇所があれば質問するなど、主体的な学習のなかでどんどん思考力をアップさせています。

そうした姿勢を維持するために、進度別にクラスを編成しています。中1、中2は2つに、中だるみしがちな中3、高1では3つにクラスを分割し、3つに分けたうちの下位クラスの英語や数学は、さらに分割します。並行して、希望制の上位補習、指名制の下位補習に加え、質問への対応、個別に課題を課すといった個別指導も積極的に行っています。理解できるまでていねいに指導し、大事に支えて卒業させる。その点も、保護者から高く評価していただいています。

貴校には甲子園を目指す『スポーツコース』があります。
進学と野球、それぞれに高い目標を掲げる生徒が共に
学校生活を送ることで、高め合うことができるように感じます。

本校の野球部は、甲子園で全国制覇 3 回、準優勝3 回の実績を誇りますが、勝ち上がるためには5つのキーポイントがあります。「高い目標を掲げていること」「日々真面目に練習すること」「最後まで絶対に諦めないこと」「チームの団結力」そして「感謝の心」。これらは実は、大学受験を突破するためのキーポイントでもあり、互いに高め合えるよう、支え合うことを大切にしています。

たとえば一般の生徒は、夏になると授業返上で県大会初戦から全校応援に参加し、勝てば全員で校歌を歌います。野球部の生徒は、一般生徒のために清掃などの奉仕活動を行います。特に全校応援は 学校の強力な勢いとなるので、参加する意義は大きいですね。保護者の方にもその旨を説明し、理解をいただいています。2015年の『紀の国わかやま国体』では私の提案で、約半数の生徒に、他県から来た相手チームの友情応援を任せましたが、その相手チームを応援した生徒たちは本校の選手がホームランを打っても、最終的に本校が勝利しても喜ぶことはなく、相手チームの応援を完璧なまでにやり遂げてくれました。将来に活きる、協働の大切さを学ぶ機会にもなっていると感じています。


韓国修学旅行では姉妹校との交流を深めたり“、38度線”を見学したり、さまざまな国際理解教育、平和教育プログラムに取り組んでいる。

国際理解・平和教育を兼ねた韓国修学旅行を実施
次に、貴校が実践する“不易、流行”の教育における
“流行” の部分について教えてください。

情報社会の発展、グローバリゼーションの進展は目覚ましく、その中で生きる力を養うために、+αの教育が必要です。

大学へ進学してからの学びや留学などに活かせるよう、日本人教員とネイティブ教員によるチームティーチングでリスニング力やヒアリング力を鍛えながら、4技能をバランスよく身につけています。高1の希望者を対象とした選抜制で実施しているアメリカ・オーストラリアへの短期留学は、特にリスニング力を伸ばす機会となっていますね。

また、生徒たちに強烈なイン パクトを与える取り組みとして、高2の韓国修学旅行が挙げられます。本校は日本で初めて韓国への修学旅行を導入して以来、41年連続で実施しています。国際理解教育と平和教育を兼ねており、姉妹校との交流を始め、さまざまなプログラムを用意していますが、一番大事にしているのは、北と南を隔てる“38度線”の見学です。もちろん訪れるのは安全な場所ですが、緊張感を隠せない生徒たちに、そこを守る韓国軍の青年が日本語でこう語り掛けます。「本当はこんなものは必要ない。いつか取り除きたい。あなたたちが将来、国際社会で活躍するようになったときには、ぜひ協力してほしい」 帰国後の感想文は、ほぼ全員 が38度線について書いています。世界のあらゆる出来事に対して当事者意識を持ち、その原因や問題点、解決策に思いをめぐらすきっかけとなることを、心から願っています。

よき伝統はそのままに英語教育の進化を図る
貴校の高い進学実績は、日々の積み重ねにより
成し遂げられるものだとわかりました。
さらなる飛躍に向けて、どのようなビジョンを描いておられますか。

高3生の多くが、最後のお弁当を食べた日、帰宅すると弁当箱を綺麗に洗って親に差し出し、「6年間ありがとうございました」と言います。そうした心を育てる教育は、保護者はもちろん、生徒の信頼を得ることにもつながっており、卒業生のお子さんが入学することは少なくありません。そしてこのことは、先代から語り継がれている“わが子のように生徒を愛する教育”、つまり、それくらいの覚悟で接し、尊敬に値する教師像を体現する教育が、教員一人ひとりによって実践されてきた証とも言えるでしょう。これからも、世代を超えて愛される学校であり続けたいと思います。

また将来的には、海外分校を設置することにより、智辯学園の小学校から高等学校までの全生徒が1カ月の海外短期留学を体験できる環境を整えたいという思いがあります。自分の英語が通用しないことを痛感し、そのくやしさを、受験英語のハイレベルな文法を会話に活かせる域にまで達する原動力としてほしい。次の世代にもこの思いを引き継ぎ、実現できればと考えています。

学校情報