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進学通信No.61-京都橘
30
7月
  • 進学通信No.61-京都橘
  • 2016 . No.61 . 京都橘 . 学力のつけかた . 進学通信 .
京都橘
インタビューに参加してくれた中学生たち。ユニークな着眼点や、理路整然と考えを説明するその姿は、先生方も驚くほど。
正しいと信じた教育を信念に従って貫く

20世紀初頭、「女子は良妻賢母たれ」という考えが常識だった時代に、「女性の自立」を理念に掲げて設立された同校。流されず、正しいと信じた教育を貫くスピリットは、共学校となった現在も脈々と受け継がれています。

その代名詞の一つとなっているのが同校の総合学習です。総合学習の定義は、思考力・判断力・表現力や、主体的な課題発見・解決能力を養う教育を、各校の判断で行うもの。同校ではその重要性に早くから着目し、多くの取り組みを実践してきました。しかし当初は、なかなか理解が得られなかったそうです。

確かにこれらの力は、偏差値やテストの点数といった、可視化される成果の見えにくい教育。保護者からは「そんな時間があるのなら、教科学習に充ててほしい」という声もあったそうです。

しかし、2020年度に実施が予定されている大学入試改革では、基礎学力以外に、先述の思考力や判断力、表現力なども合否の基準となると言われています。同校のこれまでの教育実践が実を結ぶに違いありません。総合学習主任の菊地昭男先生は、かつてを振り返ってこう笑います。「大学入試が変わるから実施したのではありません。本校の教育実践と、これからの時代が求める力が合致したという感覚なのです」

自らの興味・関心に基づき卒業論文を執筆

同校の総合学習における教育目標は、「自分の人生の主役として、周囲の人の協力を得ながら『探究力』を高めること」。そしてその軸となっているのが、「調べる」「本物に触れる」「課題を見つける」「まとめる」「アウトプットする」という一連の過程です。これらを、さまざまな題材・フィールドワークを通じて経験することで、試験の点数だけでは見えない「得た知識を発展・応用できる力」を養います。新入試制度に照らしても、その重要性は歴然。これまでは得た知識をそのまま再現する力が求められてきましたが、これからは得た知識を教科横断的に「使う」力も評価対象となるのです。

そのために同校で一貫して行われている取り組みが、周囲にプレゼンテーションするための「書かせる」行為。その成果があってか同校の生徒たちは、何事も「知ろう」とする意欲や、意図して主体的に学ぼうとする姿勢が強いのも頼もしいところ。ものごとを本質的に理解するということは、それを他者にも説明できるということであり、受動的な学びの姿勢では不可能な行為だからです。

その集大成として中3で取り組むのが『卒業研究』。自ら設定した社会的テーマに基づき、約半年かけて画用紙を台紙にした20ページ以上の卒業論文を執筆し、プレゼンテーションも行います。それを基盤に高校では、さらに実践的な小論文執筆やディベートもひんぱんに行われ、より洗練されたスキルへと高めていきます。これらの力が受験はもとより、実社会を生き抜くタフなメンタリティの礎となっていくのです。

調べ学習
「今まで読書が苦手だったけれど、自分に合う本を探すのって面白いと気付きました」という生徒も。

『ビブリオバトル』とは、各自が面白いと思った本をプレゼンテーションし、いかに他の人を「読みたい気持ち」にさせるかを競う書評合戦です。中1生は入学後に、まず学校図書館の活用法からじっくりオリエンテーションを受講。次に新聞を読み、興味を持ったテーマに関する書籍を自分で図書館から探して読了、そして発表します。最新ファッションに着物が応用されているというニュースから着付けの本を選ぶ生徒もいれば、衆議院解散と消費税問題に興味を持ち、議院内閣制を解説した本を選ぶ生徒もいるなど、書物という“知の財産”に触れる楽しさを知ったようです。生徒たちは口をそろえて「普段の勉強と違って答えが決まっていないので、考えを自由に発言できるのがうれしい。そのために調べること、知ることもすごく楽しいです!」と、総合学習の本質を見事に体現した感想を話してくれました。

職業体験
手際良く仕事をこなしていく本職スタッフの姿を見て、プロのすごさや自分の甘さに気付いたという生徒が続出。

小売業や飲食業、あるいは衣料卸売の会社など、地元企業・商店で2日間の職業体験。清掃から接客までを体験し、「働く」ということを実感します。何より大きな経験となって生徒たちの価値観を変えるのが、どんな仕事でも、陰で多くの工夫や努力、苦労があるという事実を知ること。どれだけ「仕事は大変だ」と口頭で説明するよりも、1回の経験に勝るものはありません。これにより多くの生徒たちが、「自分がどんなスタイルで働きたいのか」というキャリア観の芽生えを得るのです。

研修旅行
「戦争の悲惨さを私が語っても、自分と経験者では、その重みは比べものにならないと痛感しました」と語る生徒。

長崎への研修旅行に向け、関連映画を観たり資料を紐といたりしながら、戦争と平和に関する事前学習に取り組みます。そのうえで、現地では戦争体験者の話を聞くなど、自分の持っている「知識」と「現実」を対比。同じ戦争でも立場や国籍が変われば解釈もまったく違うことに衝撃を受けながら、多様な価値観と、その共生を考える受容性を育むのです。社会帰属意識も高まり、当時、戦争回避のために何をすべきだったのかや、現代の安保関連法案の是非についても考えるほどに、大きく成長します。

論理性必須の『卒業論文』

中3生が取り組んでいるのは、『卒業研究』の中で発表する卒業論文。中学3年間で得た力をベースに、多くの書籍・文献やネット上の情報を調べつつ、論理的に執筆していく本格的なものです。テーマも、犯罪捜査や、治療法の確立していない特定疾患についてなど、非常に社会性の高い題材。ある生徒は「普段の勉強とは、使う脳の部分が違う気がします。でもそれが楽しい」と言うほど、頭をフル回転させて知的欲求を満たしていきます。

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