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進学通信No.60「教・育・問・答」高槻中学校・高等学校  学校長 岩井 一先生
16
3月
  • 進学通信No.60「教・育・問・答」高槻中学校・高等学校  学校長 岩井 一先生
  • 2015 . No.60 . 教育問答 . 進学通信 . 高槻 .

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社会の変化を見越した学校改革で

未来を生きぬく力を育む

1940年の創立以来、自由な校風のもと、男子進学校としての歴史を歩んできた同校。2014年にコース制を導入し、文部科学省の定める『スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH) 』(※1)に続き、2015年に『スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)アソシエイト 』(※2)の選定も受ける。さらに、2017年度の男女共学化など大きな学校改革を進める同校の現在と未来について、学校長の岩井一先生からお話をうかがいました。

  (※1 科学技術系人材育成を目的に、理系や数学教育を重点的に行う高校について、文部科学省が指定する制度。)
  (※2 国際的に活躍できる人材育成を目的に、語学や国際的素養を養う教育を重点的に行う高校について、文部科学省が指定する制度。)


従来の学力レベルを維持しつつ
新時代の教育を積極的に展開

──2020 年度に予定されている大学入試改革(※3)により、今後の中等教育も大きく変わると思われます。貴校の改革は、その布石でしょうか。
  takatsuki60-01本校の改革は、2020年度予定の大学入試改革が発表される3年ほど前から行っています。その方向性が、現在教育改革を進めている文部科学省の方針と、合致したのです。
大学入試改革への対応ですが、中等教育の現場には2つの問題があります。1つ目は、従来型の学習、つまり「基礎学力をいかに定着させるか」ということです。この点について、本校は今まで通り、より本格的に、きめ細やかに取り組む方針です。
たとえば、中学においては朝の始業前や授業中に小テストをひんぱんに行い、基準を満たさなかった場合は追試や補習の対象となります。また以前は検定外の教科書を使用していましたが、今は検定教科書を使って基礎を固め、発展的な内容まで取りこぼしのない指導をしており、その結果、中学生の学力は年々向上してきています。基本的な学習スタイルを作るために、毎日課題を出し、教員がその成果を点検するようにしています。新しい大学入試では、高校基礎学力テストや大学入学希望者学力評価テストが導入される予定です。前者の結果は、従来の推薦入試やAO入試などの試験の判定資料になると予想されます。後者のテストは選択式以外に短文の記述式問題も含むものです。ですから、高度な学力養成は、これまでと変わらず必要だと考えています。

2つ目は「21世紀型の学力の養成をどうするか」です。これについても本校では対応を始めており、生徒が能動的かつ主体的に考え、学んでいくスタイルの授業(アクティブラーニング)を展開しています。たとえば、国語科では人に伝わる文章の作成指導に力を入れています。またグループでの話し合いもひんぱんに行っていますし、発表や、発表者を評価するという活動も行っています。
英語の授業では、ベルリッツジャパン社と提携して、週3時限、本格的な英会話の授業を行っています。これは、4年前から始めたもので、中学3年間で英語の4技能(読む・書く・聴く・話す)を育成し、生徒が臆することなく英語を活用することを目指しています。
ただし、本当に従来の国公立の難しい入試がなくなるのかという心配もありますので、そこにも、いつでも対応できる形でやっていこうと考えています。

(※3 文部科学省が進めている教育改革のひとつ。現行のセンター試験を廃止し、大学入学希望者学力評価テスト( 仮称)を導入するなど入試方式が変更される。試験内容も、知識の量ではなく、思考力や判断力など知識の活用力を問う形へ変更される予定。)


SSH、SGHの活動を通じて社会性と専門性を養う

──昨年、『グローバル・リーダー(GL) 』『グローバル・サイエンス(GS) 』『グローバル・アドバンスト(GA) 』の3つのコース制度を導入されました。そしてSSH の指定、今年はSGHアソシエイトの選定を受けています。これらも2020 年を見すえた取り組みなのでしょうか。

本校は、昨年、大阪医科大学と法人合併しました。2016年には大阪薬科大学とも法人合併をします。もともと理系志望の生徒が多く、今後は大阪医科大学や大阪薬科大学志望者も増えると思いますので、理系志望の生徒はさらに増加するでしょう。

『SSH』としては、京都大学や大阪大学との連携以外に、大阪医科大学と合併したメリットを生かして、医学部の生命科学系の実験を高校生に体験させるなど、先進的な高大連携プログラムを行っています。スタッフについてもSSHの指導で実績のある方々を迎え、大幅な補充を行いました。
『SGH』については、アソシエイト選定をいただく以前から取り組んできました。本校では“グローバルヘルス(国際保健医療)”をテーマに、国際的な諸問題に対する生徒の問題意識を高めながら、同時に絶対不可欠なものとしての生徒の英語力を高めています。
たとえば、京都大学医学部の研究室に所属する海外からの研究者に、ひんぱんにグローバルヘルスについてのセミナーをしていただいているほか、大阪大学のグローバルコラボレーションセンターとも連携しています。
このグローバルコラボレーションセンターの協力を仰ぎ、今年11月には『GAコース』の生徒を、パラオ共和国でのフィールドワークに連れて行きます。自分の知らなかったものとの出会いによって、生徒の視野が大きく広がることを期待しています。

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現在、SSHとSGHは、このように活動を展開しています。
こうした取り組みを行っている理由は、大学入試改革の根本となっているものと同じです。自己肯定感が低く、社会で活躍できない若者が増えていることへの対応です。社会性を身につけないまま、若者が世の中に出ている。それならば、新しい観点の教育が必要だと考えたのです。社会で大事なことの一つは、相手の話をきちんと聴き、自分で考え、相手を説得することができるということです。自分の理想に向かって勉強や研究をしていく人を育てるという点で、本校の進めていた改革が文部科学省の方針と合致していたと感じています。
 また進路指導の面では、ブランドイメージで大学を選ぶことなく、実際にその大学で何を実現したいのかを考えるような指導を徹底しています。そのために、生徒には、普段からどんどん発言しなさいと伝えています。たとえば道徳の時間でも、“Show and Tell”のようなプレゼンテーションのトレーニングをしていますし、教師の話をただ聞いて、おとなしく座っているのではなく、目を輝かせて授業に参加する生徒を増やすような授業にしないといけないのです。

──未来型の授業を先取りしていると感じます。

3年ほど前から、電子黒板を全教室に導入し、テキストのデジタル化も行っています。従来の黒板は、すべて白板に変えました。生徒自身もパソコンのプレゼン用ソフトで資料を作り、発表しています。こうすると、生徒参加型の授業となります。改革の流れのなかで、こうした教育環境も変えています。

──現在の中等教育は、より手をかける必要があると思います。

takatsuki60-06せっかく本校を選んで来ていただいているので、鍛えていきたいのです。
同世代の海外の子どもたちに比べて、日本では「僕は駄目な人間だ」と劣等感を感じている子どもの比率が非常に高い。試験の点が取れなかっただけで、自分は駄目だと感じる。その弱さを鍛え直したいですね。
昨年から教員たちに、中学では平均点を75点、高校は平均70点に設定しようという方針を出しました。中学で平均75点ですと、トップクラスの生徒は平均90点台になります。すると、勉強に対する意欲が高くなりますし、自己肯定感や自信を持つことにもつながると思います。私たちも、日ごろから生徒たちに「目標は大きく!」と発破をかけてその気にさせながら勉強させています。
教科内容を完璧にマスターするということを早い学年の段階で行い、高校では、SSHやSGHの高度な内容を学びながら、将来、何になりたいかというキャリア観も育んでいく形です。
また、中3に進級する段階で、『GL』『GS』『GA』のコースに分かれますが、コース選択は持ち点制にしています。生徒は自分の行きたいコースを自由に選べるのですが、持ち点の高い人から選ぶ権利があるので、定員に達すると進めない。そういう競争意識や向上心、将来に対する目標意識を高めています。


多彩な行事と記録習慣で
進路を意識させる

──海外の入試制度では、課外活動や学校行事での活動内容も重要な評価対象になっています。

takatsuki60-04課外活動や行事で大切なのは、“記録すること”です。本校では、生徒たちに『学修ポートフォリオ』を持たせて、京都大学のグローバルヘルス学会や大阪大学の公開授業など、行事に参加した感想や学んだこと、自分の感じたことなどを記録させています。自分の経験を1つずつ積み上げていくことで、自分はこういうことをしたいというストーリー性が生まれます。
たとえば、『東京研修』では、大学の訪問だけでなく松下政経塾で実際に研修させていただきました。この国の未来を支えるリーダーになるべき人たちと直接話すことで、生徒の意識も大きく高まりました。子どもたちの反応は音叉(おんさ)の共鳴と同じです。周波数の合うところで共鳴しますが、何に共鳴するかはわかりません。そのため、イギリスやアメリカでの研修、ボランティア活動など、いろいろな課外活動や行事を組み入れています。


2017年度の共学化を機に
新しい学校へ生まれ変わる

──男女共学化のビジョンをどのように描いているのでしょうか。

takatsuki60-09きっかけは、大阪医科大学との法人合併で、合併がなければ今後も男子校の予定でした。しかし、同大学の医学部医学科の学生の3割が女性で、来年度に合併する大阪薬科大学の薬学部は6割が女性です。そこを考えた際に、共学にしようと考えました。現在、若手教員を中心とした『共学化特任プロジェクトチーム』が準備を進めています。特任チームには、男子校から共学校へ移行するのではなく、1校2制度で移行していこうと話しています。「前はこうだったから」というのではなく、男子校の学年と共学化以降の学年では、制服や規則なども、違っても良いので、最善のスタイルを作っていきたいのです。
校舎も新築します。2016年4月に新校舎建設に着工し、順次解体と建設を行い、2020年に完成する予定です。
新校舎は、7つの実験室が集まった『サイエンスストリート』を持ち、アクティブラーニングやオールイングリッシュの授業、大小さまざまなプレゼンテーション・スペースなど「グローバルリーダーとなる志を育成する空間」をコンセプトに、真の“生きる力”と“学力”を育むことを目的としています。

──完全に新しい学校をつくるという意識なのですね。

共学化にともない、1学年の女子の募集人員は60~80人くらいを予定しています。キャリアアップしていく意識の高い女子と男子が、競い合い励まし合って互いに成長していく、勢いのある学校をつくっていきます。
学校の雰囲気は大きく変わると思いますが、生徒の成長を全教職員で支え見守っていくというスタイルを、今までどおり守っていきたいと思います。

──新しい教育が完成するにつれて、海外大学への進学も現実的になりそうです。

今後は、日本全体がグローバルな観点で動かないと、一定水準以上の生活を営むことが難しくなるでしょう。現在の中学生の中からも、数年後、海外の大学へ進学したいと言う生徒が出てくると思います。私も、海外へ留学する生徒が増えることを楽しみにしています。
我々が考えているのは、今を生きるための力ではなくて、20年、30年先の時代を生き抜く、しなやかな力の素地を育成するということです。学業でもその他の活動でも、いろいろな経験をし失敗もしながら、強さだけではなく深みのある、社会貢献意識の高い若者を育成していきます。

(取材・文/櫻井徹也  撮影/金子直樹)

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岩井 一 先生 PROFILE

takatsuki60-021948 年生まれ。1973 年、高槻中学校・高等学校へ赴任。長年にわたって教科とともに、アメリカンフットボール部顧問としても指導にあたる。教頭を経て2010 年、学校長に就任。創立70 周年事業を成功へ導く。現在は、学校改革に尽力している。


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