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進学通信No.59「教・育・問・答」明星中学校高等学校 理事長・学園長 坪光正躬先生
16
11月
  • 進学通信No.59「教・育・問・答」明星中学校高等学校 理事長・学園長 坪光正躬先生
  • 2015 . No.59 . 教育問答 . 明星 . 進学通信 .

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伝統の全人教育を根幹に据え

グローバル化社会で活躍するための素養を育む

進学校として高い大学合格実績を誇る同校。フランスのカトリック男子修道会『マリア会』を母体とし、1898年の創立以来、キリスト教に基づく全人教育により“紳士のこころ”を育んできた学校としても知られています。長く受け継がれてきた教育理念やそれを体現する取り組み、またグローバル化社会や2020年に導入予定の大学入試制度を見すえた新たな試みなどについて、理事長・学園長の坪光正躬(つぼこうまさちか)先生にお話をうかがいました。


 

キリスト教の教えに基づく全人教育を実践

──カトリック学校である貴校が、教育を実践するうえで大切にされていることを教えてください。

meisei59-06本校は、カトリック修道会『マリア会』によって設立された、キリスト教の教えによる教育観、人間観を大切にしている学校です。本校創立者の「明星の生徒は神様から預かった大切な生徒たちだから、彼らの成長のためにあらゆる努力を惜しまない」という言葉を教育理念とし、キリストが人びとに示した理想的な人間像を、生徒の一人ひとりの中に実現することを教育目標に掲げています。理想的な人間像とは、「神のみ前に自らの弱さを認める謙虚さを持ちながら、絶えず自分の人格の陶冶を心がけ、同時に他者の尊厳を認め、そのためには、自分に不利な事柄もあえて引き受ける寛容さを持つ人間」。私学にとって建学の精神は、もし実現できなければ存在理由がなくなるといっても過言ではないほどに大事なものです。本校は聖書の言葉「地の塩、世の光」、また「よき明星紳士たれ」を標語とし、全人教育を実践してきました。勉強だけ、あるいはスポーツだけをしていればいいということではありませんし、また、外見的に紳士になるということでもありません。心の豊かさを持った、あるいは、自分を必要とする人にさりげなく手を差し延べられるような人でありなさいということを、生徒たちには折に触れて話すようにしています。後にも先にも、その部分に関しては、決してぶれることはありません。


中高6年間を通じて人生を学んでほしい

──人間教育には、具体的にはどのように取り組まれていますか。

本校では伝統的に、必ず週に1時間、宗教の授業が行われています。その中で、学校が依って立っているキリスト教の世界観というものを、中1から高3まで各学年に合わせた内容を段階的に学び、発展させていきます。宗教の時間だけではなく、学校生活全般において実践していて、たとえば教科学習なら、先生は数学を教えながら人生を教えます。これは非常に重要だと考えていますので、新任の先生に対しては、校長自身が年間を通じて週1回の研修を実施しています。そうしたことを通じて、全教員に、言わず語らずのうちに学校の歩むべき方向性というものが伝わればいいなと考えています。
生徒たちは、明星の教育理念を理解したうえで入学してくるとは限りません。進学校ということもあり、学力の向上だけを目的として入学する生徒もいますが、そうした生徒も含めて、最初の夏休みを迎える頃には、いわゆる“明星らしい”生徒になっていますね。意外と時間がかかりがちなのが保護者の方ですが、年に5回、全員参加を基本として行っている保護者会の成果でしょうか、最終的にはほぼすべての保護者の方から、「明星でよかった」というお言葉をいただけています。

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また中2では、キリスト教の原点を探ることを目的の一つとして長崎での研修旅行を行っており、カトリック浦上教会(通称:浦上天主堂)でミサに預かります。普段の学校生活の中でしばしば行うわけではないですし、宗教行事に対する姿勢は教えてできるようになるものでもないので、そうした機会に、自然と厳かな気持ちになるということを体験してほしいと思っています。カトリックの洗礼を受けた生徒が多いわけではありませんが、多くの卒業生は、“そういう雰囲気”が印象に残っていると言っていますね。 大切なのはそうした中で、「自分はどういう生き方をするのか」ということを、教えられるのではなく自分で会得していくこと。人間というのは、多くの友人や先生、いろいろな出来事との出会いによって会得するものですし、人間性が円熟していくものです。つまり人として成長するためには、人生における出会いをすばらしいものにすることが肝要なのですが、それを実践する6年間、人生を学ぶ6年間を送ってほしいという思いがあります。

──まさに中等教育にこそ必要なことだと感じます。そうした中で育まれる“明星らしさ”は、どのような形で表れるのでしょうか。

meisei59-09ボランティア活動で発揮されていると思います。東日本大震災の際には、わかめ漁の漁師さんが石や砂を詰めておもりとして使うための袋を、生徒たちは家族で何百と作って送っていましたし、『ワンコインプロジェクト』では、保護者の方も一緒になって500円玉を集め、漁師さんが使うトラックを2台贈りました。本校では昔から、教員と各クラスの委員で構成される『小鳩会』という組織を通じて、国内外での献金活動を継続的に行っていますので、そうしたことも自然体で実践できるのだろうと感じています。


学校を挙げて新たな教育を研究・推進

──貴校の宗教情操教育を通した全人教育は、多文化共生社会における、異なる文化背景を持つ人々との交流にも生きると感じます。国際教育としてはどのような取り組みをされていますか。

本校はもともとフランスの宣教師によって創立された学校ですから、常に世界的な広がりの中で人とつながる、文化とつながるということを意識させるようにしています。
中学では全学年において、通常の英語の授業とは別に、プラスアルファとしてネイティブの教員による授業を全員参加で行っています。ネイティブ教員には3日間の合宿にも同行してもらっていますが、生徒が気軽に英語で話しかけているようすが見られますね。人とコミュニケーションを図ること、母国語以外で自分の意見を伝える難しさを体験してくれればと思っています。
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高1の全生徒が参加する合宿では、多文化共生社会への適応力を育むために、ディスカッションやプレゼンテーションなどを、すべて英語で行うことにしました。そして2年ほど前からは、京都の洛星高等学校と連携し、高2の希望者を対象とした選抜制で、海外研修『次世代リーダー養成プログラム』を実施しています。これは、ハーバード大学のキャンパスに滞在しながら、同大学の学生との交流や、金融業界で活躍されている方のレクチャー、マサチューセッツ工科大学の日本人留学生との交流などを体験するもので、帰国後には、生徒や保護者に向けた報告会を開催しています。
多文化共生社会のコミュニケーションツールとして、英語力を身につけることは非常に重要です。しかし、ただ単に英語を習得するのではなく、授業や研修などでの交流を通して、異文化理解力を養い、人間的にも成長して、文化背景の異なる人たちと人間的な交流ができるレベルまで到達してほしいと考えています。

──2020 年には大学入試で多元的評価(達成度テスト)が導入される予定です。今後は、それに向けても、さまざまな教育プログラムが必要になるでしょうね。

meisei59-05本校の長く受け継がれてきた教育理念が失われるような教育改革は一切考えていませんが、今と同じ教育内容のままでは、遠からずして手遅れになってしまうことは必至です。そこで委員会を立ち上げ、学校を挙げて新しい時代の教育のあり方について研究を行いながら、随時、新たな試みをカリキュラムに反映させています。
その一環として挙げられるのが、キャリア教育に取り入れている問題解決型・教科横断型のアクティブラーニングです。今年度はまずキックオフガイダンスを実施し、主にホームルームの時間を活用して、中1では“ヒューマンドキュメンタリー”、中2は“コミュニケーション”、中3では“大阪の歴史と文化”、高1は“真に豊かな世界のデザインとマネジメントの提案”といったテーマに取り組むことにしています。2016年1月には生徒がその成果をプレゼンテーションする予定になっていて、今から楽しみですね。
また従来から、各学年に応じたキャリアガイダンスを行っています。自分の得意分野は何か、どのような職業に就くのか、どのようなことを人生のライフワークとするのか。そういったことを考える機会となっています。

meisei59-08そして、キャリア教育をはじめ、学校生活すべてを通して生徒一人ひとりの成長を記録するツールとして、『キャリアガイダンスノート』というものを用意しています。そのときの物事に対する考え方や人生観などのほかに、定期考査や実力試験の結果、それに対する反省点、保護者の方と担任のやりとりなども集約されていて、その1冊を見れば、自分自身の1年間の成長や変化がわかります。これを導入したのは10数年前のことですが、最近ではそのノートにエッセイを書かせるなど、より幅広く活用するようになりました。これがあれば、過去の自分を振り返りながら、今の自分をしっかりと見つめることができます。
本校には、大学に入ってから将来のことを考えようという生徒、とりあえず自分の成績のレベルで入学できる大学を受けようという生徒はいません。以前、その気になればどの大学にでも行けそうな学力の高い生徒がいましたが、「獣医になりたい」という夢をかなえるために全国の獣医学科を調べ、自分自身が一番よいと思える大学に進学、入学生総代を務めました。このように自ら選び、判断する生徒の姿こそ、本校の教育の特徴だと自負しています。


自主性を育み尊重する教育を継承することで
生徒の未来を切り拓く

──課外活動で得られた知見や、それをアピールする表現力などが問われる新しい大学入試において、また、これからのグローバル社会において、貴校でさまざまなことを考え、体験した生徒たちは、大いに力を発揮できると感じます。

今後も、そうした力を培う学校であり続けたいと思っています。
本校は進学校として認識していただいていますが、もともと、ガリガリと受験勉強をさせるような学校ではありません。その校風は、中1の夏に実施する林間学校に表れていると思います。林間学校といえば学習を中心に据えるケースも多いかと思いますが、本校では4日間、集団行動に慣れるということを一番の目的としており、このプログラムの中には「勉強」はありません。ミサに参加したり、皆で食事をしたり、レクリエーションを楽しんだりと5分刻みのスケジュールで活動する中で、集合時間や就寝時間を自主的に守る姿勢を養います。こうした行事を通じて、集団の中で、自分がどのような役割を果たすべきなのかということを感じてくれていると思います。
そのように自主性を育んでいますから、進路指導でも「この大学を受けなさい」というようなことは一切言いません。努力するのも、結果を出すのも生徒たち。そのサポート役に徹することを最重視しています。本校はそんな学校なのです。

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その本校らしさを受け継いでいくためにも、教員には、子どもたちと向き合うためのコミュニケーションスキルのさらなる向上に努めてほしいと願っています。私自身は長い期間、姉妹校の暁星学園で宗教科教員を務めました。6学年24クラス中、20クラスほどを担当していたこともあったのですが、自分がまるで全校生徒の担任であるように感じられ、とても楽しかったことを覚えています。当時の教え子たちとは今も交流がありますが、そういった関係性は、単に「勉強しなさい」と言うのではなく、普段から一緒になって喜んだり、悲しんだり、ときには議論し合ったりしていたから生まれたものなのかなと思うのです。そうした関係性のもとでこそ、生徒たちの未来を切り拓く原動力となる自主性や意欲を育むことができる。そう信じています。

(取材・文/小河砂綾  撮影/中川誠一)

meisei59-01坪光 正躬 先生 PROFILE
1941 年、石川県生まれ。上智大学文学部哲学科、同神学部神学科卒業後、司祭に叙階される。暁星中学校・高等学校等で教鞭をとった後、1989 年に学校法人大阪明星学園理事に就任。明星中学校・高等学校副校長、学校長を歴任後、1997 年より現職。


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