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進学通信No.58-「教・育・問・答」京都女子中学校・高等学校 学校長 林 信康先生
17
6月
  • 進学通信No.58-「教・育・問・答」京都女子中学校・高等学校 学校長 林 信康先生
  • No.58 . 京都女子 . 教育問答 . 進学通信 .

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“自立・共生・感謝”の心を持ち
グローバル社会で貢献できる有為な女性を育成

明治43年、浄土真宗の開祖・親鸞聖人の教えを女子教育に生かすことを理念に創立された同校。国公立大学進学率は京都府内の女子校ではトップの実績を誇り、卒業生は医療界や法曹界、研究職ほか幅広い分野で活躍しています。伝統を守る一方で、近年は『Ⅲ類』『Ⅱ類』『ウィステリア』の3コースを設置し、特色ある教育を行う同校の現在について、学校長の林信康先生にお話をうかがいました。


 国際化が進む現代こそ中等教育が重要

──国際化が進む現代社会において、中等教育にはどのような意義や役割があるとお考えでしょうか。

kyotojoshi58-3より人間性が問われる時代になると思います。そのなかで、将来、自分がどのように生き、どのような職業を選択し、社会あるいは家庭での役割を通じて、国際社会に貢献していくか。その基礎を育む中等教育期は、非常に重要だと考えています。
   具体的には、社会を見すえた教育です。従来の単に知識や技術を教える教育ではなく、その活用力を育むなどのキャリア教育が大切です。もうひとつは、国際化のなかで、どのような人物像を養成するかという点で、私学の建学の精神や宗教教育を通じて、国際化に対応できる人物を育成することが必要ではないかと思っています。
   世界から日本を見ると、先日、世界経済フォーラムで発表された男女平等の達成レベルを評価したレポートで、日本は142カ国のうち104位と、まだまだ女性の社会進出の浸透度が低い状況です。日本では、伝統的な慣習から男性社会の傾向が強く、旧態依然とした共学の教育体制のなかでは、女性は男性のサポート役という意識になっています。
   私自身は、女子も男子も根本的には同じ人間教育が必要だと思いますし、共学も良いと思います。しかし、現代の教育で、女性が自分の将来を見すえ、自分の適性や能力などに応じて自分の進路を選択する意識を育むのは、女子や男子の役割が固定化していない女子校という別学だからこそできることだと私は感じています。自分の個性を集中して見つめ確立させることができるので、進路や職業の選択の幅も広がります。本校は理系を選択する生徒が多く、卒業生は医歯薬系や法律系など幅広い分野に進んでいます。


自分自身を見つめ認めたうえで
周囲の人々に感謝する心を持つ

──貴校の人間教育では、仏教に根ざした教育を伝統とされています。

創立以来、親鸞聖人の教えをもとに、人間教育・宗教教育に根差した女性の地位向上という建学の精神は、現在も息づいています。多くの仏教では煩悩を滅して、高いところから人間の理想像を述べます。しかし、親鸞聖人の精神では、まず自分は煩悩を持った人間であることを認めます。学校生活でも、自分は絶対正しく、相手は間違っているという考え方ではなく、お互いに煩悩を持った人間として認め合い、お互いに周囲の人々を理解し協働して、共に仲間として生きていく。この精神こそが、本校の独自性といえます。
また、浄土真宗はいわゆる戒律がない比較的自由な仏教です。自由だからこそ、自律、自立の面で、自分で責任を持って、考え、判断し、行動していかなければならない厳しさがあります。このことを生徒にも保護者の方々にも理解していただくために、建学の精神をわかりやすいように、“自立・共生・感謝”という言葉で伝えています。

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──宗教的な行事も、数多く取り入れておられるのでしょうか。

本校には、週1回の宗教の時間と礼拝の時間があります。宗教行事としては、私が赴任した当時は、『花まつり』や『元旦会』などがありましたが、少しでも情操を育む場を増やそうということで、加えて親鸞聖人の『降誕会』・『報恩講』、『涅槃会』などの希望参加制の行事を設けました。こうした宗教教育を通じて、情操も養われていると感じています。宗教の時間では、生死の問題を考えさせる機会があります。特に医歯薬系や看護系、理系などに進む生徒には、生命倫理、環境倫理など生命「いのち」について根源的に考えることが必要だと思います。


中学で基礎をていねいに育むことが
大きな成長につながる

──人間教育を根底にしながら、国際的に活躍する人物を育む。そのために、どのような国際教育をされていらっしゃるのでしょうか。

kyotojoshi58-5現在、国際化とともに多様化が進んでいます。相手の国の文化・思想を知ることは、とても大切なことですが、まず自国の文化・思想・言語を知っているかどうかが大事なことです。お互いの国の文化・思想・言語を尊重しながら共生の世界を確立していかねばならない時代です。国際化・多様化に対応し、平和な世界を創造していくかが急務の課題です。 
本校は日本独自の文化・思想を大切にしています。国際化のなかでは共通語としての英語とともに、母国の文化、言語、思想の教育が大切だと考えています。きちんとした母国語の読解力・表現力・論理的思考力などをまず身につけていくことが必要です。それがベースにあれば英語もできるのではないかと思います。同時に英語教育の方も「書く」「読む」「話す」「聞く」という力が大切ですので、そこを伸ばすようにしています。
本校には、社会で貢献できるエキスパートを育む『Ⅲ類』、生きる力を総合的に育む『Ⅱ類』、『ウィステリア』の3つのコースがあります。国際教育という点ではグローバル化が進む社会で生きる総合的な力を中高大一貫で育む『ウィステリア』が最たるものです。
 『ウィステリア』の中3では、オーストラリアへ海外研修に赴き、現地の学校に通ってホームステイなどの実体験を通じて国際感覚を磨きます。帰国後に行う英語での体験発表会では、意識も英語力も大きく成長しています。高校では、アメリカ、サンディエゴ・ロサンゼルスでの海外研修、そしてその前に英語しか使えない環境の中で過ごす1泊2日の『English Camp』など、国際感覚を育むカリキュラムになっています。また普段の授業で、裏千家の師範格の方から学ぶ茶道を始め、一流の講師から華道や着付けを学びます。海外研修では、こうした日本文化を紹介する文化交流も行っていますし、毎年、交換留学も行っています。
また、中学校では英語の音読指導にも力を注ぎ、暗唱大会を開催しているほか、今年度は近畿や京都府の英語暗唱大会に参加した生徒が、最優秀賞を取ってくれました。

──国際感覚を身につけ、英語での発信力を高めるためには、国語や日本文化への理解が重要なのですね。

本校では、中学から多くの文章を読むことで、考える力を養っています。そのために、6年間を通じて読書の機会を多く設けており、読書感想文もたくさん書かせています。また、中学校では、“古典に親しむ”という意味で『かるた大会』を行っているほか、高校ではホームルームの時間に、みんなで課題図書についてのディスカッションをする読書会も行っています。特に6カ年一貫で取り組んでいる生徒は文章表現力が高く、全国高校生読書体験記コンクールで優秀賞に輝いた生徒もいます。

──理系に進む生徒が多いように、学習面では数学や理科教育にも特色がありますね。

kyotojoshi58-6理系は、『Ⅲ類』『Ⅱ類』の生徒が多くなりますが、特に『Ⅲ類』では理科や数学の時間数を多く設定しています。設備面では、校舎の各階に生物、化学、物理、地学の専門教室と準備室があり、実験を通じた教育を重視しています。特に女子は、抽象的な表現では理解しにくい部分がありますので、実験で「こうなっているのか」と、体験を通じて納得しながら学ぶことが大切です。そこが、理系教育で功を奏していると思います。
 数学でも理科でも“考える力”を養うことが教育のポイントです。数学の公式も、ただ覚えて問題に適用させるというのではなく、公式の構造や内容を考えさせる。基本をしっかりと理解できれば、最終的に伸びていきます。女子は理系に弱いと言われていますが、PISAの調査によりますと、科学的なリテラシーについては、ほとんど男子と遜色ありません。また、中学から英検や数検へのチャレンジを通じて、興味・関心を育み、論理的な思考を意識させています。


クラブ活動や学校行事も大切なキャリア教育のひとつ

──生徒個人の学力を伸ばす一方で、コミュニケーション能力については、どのように養っておられるのでしょうか。

主に学校行事やクラブ活動や生徒会活動です。なかでも、体育祭と文化祭は生徒の情熱が高く、生徒会や委員会、またクラス内でもディスカッションを重ねて、時にはぶつかり合いながら行事をつくっていきます。完全に生徒主導で、教員は口を出せないほどです(笑)。そうしたなかで、発想力やコミュニケーション能力、リーダーシップ、団結力などが養われていきます。
 本校の建学の精神のひとつは“自立”です。ディスカッションの場でも、「一人で生きている」という自立ではなくて、「自分はみんなに生かされているのだから、みんなの意見を聞かなくてはいけない」という調和的な自立心も養われていると思います。
 ただ、お互いの関係が近くなるほど、対人関係で問題は起こりやすくなります。しかし、最後には必ずお互いをまとめる生徒が現れます。本校の特色かもしれませんが、どの生徒にも、学校に居場所ができる。集団からはみ出そうとする生徒も、「一緒のクラスなんだから一緒にやろう」と。そういう風土が、全体的にありますね。
 クラブは中学校が21ほどあり、高校が38クラブあります。人気が高いのは、伝統的に全国大会への出場経験がある少林寺拳法部や創造性が求められるダンス部・バトントワリング部、オーケストラ部、バドミントン部、テニス部などです。最近は、高校のコーラス部が全国大会に、軽音楽部は近畿大会に初めて出場するなど、さまざまなクラブの生徒たちが頑張ってくれています。

── 2020 年には大学入試で多元的評価(達成度テスト)が導入される予定です。その意味では、授業に加えて、幅広い経験も重要になります。

kyotojoshi58-1本校の生徒は勉強だけではなく、クラブや生徒会活動、学校行事も頑張っています。中学では生徒の90% 以上がクラブに入っています。本校としても、生徒たちが多元的な力をつけることができる学校行事や諸活動をキャリア教育の一環として位置づけています。学びの場として、クラブ・行事と学業は、二つの原理があるのではなく、一元的なものです。ですから、体育祭で頑張れたのだから、勉強も頑張れる、というふうにエールを送っています。それが、生徒の力になっていくと思います。知識や技術を活用するという学習方法と共に、自主活動を通じて培われる総合的な人間力は今後、ますます問われていくと思います。


 社会で活躍するよりも社会に貢献する人物に

─進路選択も“自立”のひとつだと思いますが、キャリア教育ではどのようなプログラムを行っておられるのでしょうか。

私は、各コースの特色も含めて、学校教育全体がキャリア教育だと考えています。そのひとつとして、自分の気持ちや興味を見つめ、職業や将来像を考えるための女性としてのキャリアデザインノート『ふぃめりあ』(ふぃめーる=女性+きゃりあ、女性のきゃりあという合成語)を作成して中1からのキャリア教育に役立てています。また、グローバル社会で生きるには、知識や技能を活用し、課題を解決する探求型の力が必要です。そこで、授業では、調べ学習をしてその内容をまとめ、プレゼンテーションするという探求型学習を取り入れています。授業でディスカッションなどをしていますので、考える力、表現力を育むことができると思います。
school_kyotojyoshi高校の進路指導では、各大学のオープンキャンパスへの参加を促すほか、『Ⅲ類』では大学院生や大学生、社会人を招いて話をしてもらうなど、いろいろな行事を行っています。ほかにも、京都大学の授業体験、本校卒業生に大学を案内してもらうキャンパスツアーも取り入れています。『ウィステリア』では、京都女子大学の4年生と本校中3生との対談や、京都女子大学からフランス語・ドイツ語・中国語・韓国語の先生を招いて、高3生対象の出張型授業をしてもらっています。また、希望者は5、6時限目に大学で講義を受講し、取得単位が京都女子大学で認定される制度も導入しています。
2013 年から学園全体で、本校の将来の構想を検討し、改革を推し進めているところですが、一人ひとりの生徒を大事にし、人や社会のために貢献できる有為な女性に育ってもらいたいというのが願いです。「生かされて生きている」という思いが、共に生きるものへの感謝となり、人や社会のために尽力する人間になっていきます。それが、京女の建学の精神である“ 感謝”という意味です。

(取材・文/櫻井徹也  撮影/池本 昇)

kyotojoshi58-4林 信康 先生 PROFILE
昭和26 年生まれ。福岡県出身。大学時代から仏教学を研究する一方、宗教科・英語科・社会科の教職免許状を取得。各地の高等学校、専門学校、大学等で教鞭を執った後、平成元年に宗教科教諭として同校へ赴任。平成14 年より中学校教頭を務め、平成24 年より現職。


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