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進学通信No.57-「教・育・問・答」西大和学園  学園長・中学校校長 上村佳永先生
17
3月
  • 進学通信No.57-「教・育・問・答」西大和学園  学園長・中学校校長 上村佳永先生
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挑戦を続ける多彩なプログラムで
“1つ上のステージ”を目指す真の進学校へ

知性・国際性・人間性を兼ね備えた次代を担うリーダーの育成を目指して1986年に創立された同校。全国的にもトップレベルの進学校として名を馳せながら、今なお進化し続けています。2014年度入試で注目を集めた中学共学化の意義や目的、来年度から本格化する『スーパーグローバルハイスクール(SGH)』指定校としての新たなプログラムの概要、現在積極的に進めている教育改革の内容などについて、学園長の上村佳永先生にお話をうかがいました。


中学共学化を機に、教育のさらなる充実を目指す

――2014 年度入試では、貴校の中学共学化が大きな話題となりました。まずはその背景や意図についてお聞かせください。

nishiyamato57-06学共学化に至る起点となっているのは、本校が抱いてきた、日本における女性の社会参画が先進諸国の中でも極端に遅れていることに対する問題意識と、その解決の一助となるよう日本に貢献できる女性のリーダーを育みたいという強い思いです。もともと共学の高校からスタートした本校では、かつて女子生徒が全体の約4割を占めていました。ところが男子中学校の新設、その規模拡大に伴い、女子の割合が1割を切ってしまったのです。このままでは授業やクラブをはじめ、女子生徒のあらゆる活動において制約が生じる可能性がある、女子の力も最大限に伸ばせるよう環境の改善を図りたいと考えていました。
もう一つの背景として、本校が今まさに進めつつある改革のなかで、“余力のある生徒がどんどん先取りして学べる仕組みづくり”に取り組んでいることが挙げられます。これまで高2以降は、中高一貫生と高校から入学した生徒を混合したクラス編成を行っていましたが、改革の一環として、今年度の高1からはそれぞれの生徒を3年間、完全に分離・独立させることにしました。両方の生徒にとって最も教育効果の高いカリキュラムを組めるようになるほか、中高一貫生にとっては高1までの授業において、従来のように進度調整のために比較的ゆっくりと進める必要がなくなるので、高2のうちに高校の全範囲を終えることが可能となります。
ただしこの変更には、一つだけ問題がありました。中高一貫生が、少なくとも授業に関しては、女子がいない環境に置かれることになるのです。廊下や行事では女子生徒を見かけるのに、教室には入ってこないという状況はなんだか気の毒ですし(笑)。何より、共学教育に取り組んできた本校は、これまで男女が互いに刺激し合いながら、切磋琢磨して大学受験に臨む姿を見てきましたから、男子だけで過ごす6年間というものをイメージできませんでした。
これら2つの観点から、中学でも女子を募集しようということになったのです。

──共学となった中学ですが、男女別学を導入されているのは、どのような理由からですか。

nishiyamato57-07一つは、男女の特性の違いです。
男子には好奇心旺盛な生徒が比較的多いですから、少し無理しながら、背伸びしながらでも、興味・関心を引き出して伸ばしていく授業スタイルがよいと思います。一方、女子にはコツコツ積み上げていくタイプが多く見られるので、順序立てて自信をつけさせる指導が適していると言えるでしょう。また、精神的な成長過程が異なることもあり、特に中1・中2の男子は女子がいると、「間違ったら恥ずかしい」といった意識を持ってしまいがちです。男女別学にすることで、伸び伸びと育てたいという思いもありました。
当初は中学3年間を通じての男女別学を予定していましたが、変更する可能性も考えています。というのも、中高一貫生の学習進度を加速させていくなかで、数学は男子クラスのほうが進めやすい、国語・英語は女子クラスのほうが進めやすいなど、教科によって授業進度に差が見られるためです。現在、高校の範囲に取り組み始める中3の段階で、男女共学をスタートさせることを検討しているところです。


『SSH』『SGH』の2本立てで
広い視野と目的意識を培う

──貴校は、今年度から始動した『スーパーグローバルハイスクール(SGH)』指定校に選ばれました。

本校は、国際社会で活躍できる人材を育むことを目指して設立された学校です。創始者は、これからの日本が世界をリードしていく国であり続けるためには、従来から日本国内で展開されてきた教育プログラムに加えて、海外の人とチームを組んで仕事をするための力を培う新たなプログラムが必要だと考えました。それが、開校当初から実施している中学の『アメリカ語学研修旅行』や、アジアの国々を訪れて各国への理解を深める高校の『海外探究プログラム』です。特に中国での海外探究プログラムは、まだ海外からの観光客を受け入れる態勢が整っていないというリスクがあった時代から行われているもので、大きなチャレンジでした。それでも、現地を訪れて人々と交流し、イデオロギーや文化の違い、ハングリー精神などを肌で感じることで、自分が生まれ育った日本での恵まれた環境をあらためて見つめ直し、そのなかで自己を確立させたり、日本が世界のなかで果たすべき役割を考えたり、相手を尊重しながら自分の意見を伝えビジネスを進める将来の自分の姿をイメージするきっかけになるのではないか。そんな期待を胸にスタートさせたのです。
▼『アメリカ語学研修旅行』のようす。
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── 2002 年度以降は、『スーパーサイエンスハイスクール(SSH)』のプログラムに継続的に取り組まれていますね。

SSH のプログラムを初めて導入した2002 年は、さらなるチャレンジの元年と言えます。ある課題研究に取り組ませたのですが、当初は、大学受験に直結することがイメージしにくいプログラムに多大なエネルギーを費やすことに対して、否定的な教員もいたなかでの実施でした。しかし結果として、偏差値だけで大学を選ぶ生徒がいなくなり、明確な進路目標を持ち、学部を絞って大学受験に臨む生徒が増えたのです。このプログラムにより、社会問題に目を向けたり、社会に貢献する自分の姿をイメージする機会となり、学びの原動力につながる“具体的な目標”を持てるようになったのです。プログラムを浸透・発展させることができたのは、教員がこうした生徒の変化を実感できたからだと思います。

──生徒たちが、受け身の学習者から能動的な学習者へと成長を遂げるきっかけとなったのですね。

SSH では理系の生徒にとって魅力的なプログラムが多かったのですが、今後はSGH として、文系の生徒にとっても魅力的なプログラムを用意できるはずです。そういう意味で、SSH、SGHの2本立てで展開できることに期待を膨らませています。


 “進学保証+α”の教育を確立し、真の進学校へ

──将来的には大学入試において、中高時代、勉強以外に何をしたのかが問われる可能性も否めません。そこで、いかにいろいろな経験を積ませるかが重要かと思われます。

本校では多彩な行事・課外活動を実施しています。導入に至るプロセスとしては、まず生徒から「やりたい」という声があがり、学校がそのための環境を整えるという流れが理想的だと考えていますが、地域の町おこしへの参画を始め、よい企画は積極的に採用するので、結果として行事が増えすぎてしまいました(笑)。そこで現在、複数の行事を1つに統合する、あるいは一部の行事を選択制にするなどの工夫ができないか、議論を重ねています。

nishiyamato57-03また、今後の社会で活躍するうえでは、学習において自ら考え、答えを導き出していく経験を重ね、学ぶとはどういうことなのかを深く理解させることが肝要です。その一環として実践しているのがSSH やSGH のプログラムなのですが、本校がまだまだ改善の余地があると感じているのは、学校生活の大部分を占める“授業”です。
もちろん、教員からわかりやすく伝え理解させることは、ベースとなっています。また進学保証の観点からも非常に大事なことではありますが、教えられたことを理解さえすれば評価されるのだという価値判断がすべてになってしまうと、偏った人間になってしまいます。進路実現を大前提として堅守しながら、授業のなかで課題研究などを多く取り入れ、難解な問題にチャレンジする機会、失敗から学ぶ機会を今まで以上にたくさん設ける。さらに、テストや課題研究、行事などを含む学校でのあらゆる活動を評価の対象とすることで、本当の意味での生きる力を育む。そんな“1つ上のステージ”を目指す学校こそが、真の進学校と言えるのではないでしょうか。そうした思いが教員の共通認識として浸透してきています。

──前述の“余力のある生徒がどんどん先取りして学べる仕組みづくり”は、その一環ですか? 

そうです。年2回実施する中学の実力テストにおいては、3学年共通の無学年制を導入しています。加えて課外の特別講座では、希望に応じて別学年の講座を受けられるように計画を進めているところです。
授業そのものでは、特に英語科が、教員からの声をきっかけにここ数年で大きく変化しました。英語は多文化社会におけるコミュニケーションツールですから、“使えてなんぼ”。「覚えることが多すぎる」といった理由で嫌いになってしまう状況は避けたいところです。そこで、“とにかく伝える”ことを重視するという方向に転換し、ネイティブ教員によるコミュニケーションの授業数を倍に増やしたり、音楽・美術・情報・体育で英語による授業を行ったりと、英語を必然的に使う場面を数多く用意しています。


生徒と徹底的に関わるスタンスを
貫きながら進化し続ける

nishiyamato57-02-─–お話をうかがって、常に先を見すえ、たゆみないチャレンジと進化を続ける姿勢が伝わってきます。
授業時間数だけをとっても、イメージと実態には大きなギャップがあるように思います。かつては授業の多い学校でしたが、与えるものを厳選しようとの思いから実はどんどん減らしていて、夏休みは各自の興味・関心に沿って自由に活用することが可能となっています。そして現在も、次なるステップに向けて変わっていく過程にあります。時代の変化に適応する力を培うという観点からも、学校が落ち着く必要はない、挑戦あるのみだというのが持論です。
そのなかで大事にしたいのが、本校らしさとも言うべき“教員が生徒と徹底的に関わるスタンス”です。これは、一から十まで一方的に押し付けるという意味ではありません。失敗するとわかっていながらあえて見守るのも、関わり方の一つです。多彩な体験も、教員の関わりなくして実りあるものにすることは不可能です。別の言葉に置き換えるならば、“面倒見のよさ”でしょうか。関わっているということを生徒が感じ取れないような状況をつくることができれば、なおよいですね。このスタンスのもと、「世界を変える」という気概を持ち、国際社会に貢献できる人物を育みたいと思っています。

(取材・文/小河砂綾  撮影/合田慎二)

nishiyamato57-04上村 佳永(かみむらよしひさ) 先生  PROFILE
1963 年生まれ、奈良県出身。1987 年から西大和学園高等学校教諭を務め、1998 年には中学校・高等学校教頭に。2005 年、学校法人西大和学園白鳳女子短期大学に移り、助教授を経て、教授、看護学専攻長、企画改革部長を兼任した。2007 年に西大和学園カルフォルニア校へ教頭として赴任し、翌年校長に就任。2010 年西大和学園中学校・高等学校に副校長として戻り、2011 年より現職。


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