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進学通信No.56-「教・育・問・答」滝川 江本校長先生
02
12月
  • 進学通信No.56-「教・育・問・答」滝川 江本校長先生
  • No.56 . 教育問答 . 滝川 . 進学通信 .
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「確かな学力」「社会で戦う人間力」を培い、
グローバル社会を担うリーダーを育む

1918年の設立以来、“至誠一貫”“質実剛健”“雄大寛厚”の三校訓を根幹とする教育を貫く同校。真のリーダーを養成するという創立時の理想は、『滝川リーダーシップ教育』として今に受け継がれています。また2014年度からは、グローバル社会に対応する『新滝川教育プログラム』が始動。たゆみない進化を続ける同校の取り組みや今後の展開について、校長の江本博明先生にお話をうかがいました。


 

時代に即したスピーディーな対応が、
私学の最大の魅力

──まず、貴校が教育を実践するうえで大切にされていることを教えてください。

創立者の瀧川辨三先生は、その貴重な経験、豊かな人生観、徹底した人格主義的な立場から社会に有益な人材を育成するには何を指針とすればよいのかを熟考し、“至誠一貫(誠実に)”“質実剛健(たくましく)”“雄大寛厚(おおらかに)”の三つを校訓として掲げました。その思いは、「集団行動・モラル・キャリア・コミュニケーション・探究」という視点から数多くの経験を積むことで、8つの精神「誇り・志・完遂・創造・自律・主体性・利他・共に創る」を身につけるための『滝川リーダーシップ教育』に受け継がれています。瀧川先生の考え方や生き方を反映した校訓に立脚した人間教育を基本としながら、進学を実現するというスタイルこそが、本校の伝統といえるでしょう。

founder──長く公立学校の教員を務められたとうかがっていますが、私学の魅力はどのような点にあると感じておられますか。
時代の変化にスピーディーに対応できるところ、つまり決定から行動に移すまでが迅速にできる点にあると思います。今、グローバル人材の育成について、さかんに議論されていますが、保護者の中には「具体的にどのような力を身につけなければならないのか」「家庭教育はどのようにすればよいのか」といった悩みを抱えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私自身は、2020 年に開催される東京オリンピックを機に、日本の社会が大きく変化するのではないかと考えています。例えば政府の教育再生実行会議では現在、2020 年くらいを目途に国公立大学入試2次試験の学力試験(ペーパー試験)廃止が検討されています。これは面接などの人物評価を重視し、大学の教育に結びつけなければならないのではないかという考え方が根底となっているものです。それを受けて近年は国公立大学でも、特色入試などを取り入れようとする動きが見られるようになりました。また、「グローバル化とは何か」と考えたとき、今の中学生、高校生に最も関係深いものとして挙げられるのが、労働市場の自由化です。東京オリンピックの開催にともない、今まで以上に多数の外国人労働者が日本に入ってくることは想像に難くありません。
中等教育の使命は、そうした社会の中でも生き抜くことができる人材、つまり “スペシャリスト”の道を歩むための手助けをすることにこそあると思っています。そのためには、従来の取り組みだけでは、それは実現できません。そこで本校ではここ数年、長い歴史と伝統を踏まえながら、こうした社会の変化にどのように対応していくのかを検討し、さまざまな取り組みを試行してきました。その集大成ともいえるのが、今年度からスタートさせた『新滝川教育プログラム』です。試行段階で手応えが得られた取り組みを柱とし、「確かな学力」と「社会で戦う人間力」を培うことを目的としています。


 

次代のリーダーを育む
『新滝川教育プログラム』

──『新滝川教育プログラム』についてお聞かせください。

マインドマップ実習  『新滝川教育プログラム』の骨格となる取り組みは3つ。1つ目は、学校設定科目として設けられた『リーダーの時間』です。従来から高校のホームルーム活動などで実施してきた内容も含めて、「集団行動・モラル・キャリア・コミュニケーション・探究」をテーマとした独自のプログラムで「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった社会人基礎力を育成します。そのための特徴的な取り組みに『マインドマップ®』の作成があります。これは私が以前から中高の段階でぜひ身につけさせたいと考えていた“思考法”の習得を目指すもので、発想を広げ、思考を整理し、論理的に考えることを学ぶツールとして世界中で高い評価を得ています。社会のあらゆる場面で必要とされる「自分自身で意志決定する」ための思考法の基礎を学んでいるのです。
<写真>思考を整理するツール『マインドマップ®』を作成する生徒たち。

2つ目は、1週間の授業内容を確認する『振り返りの時間』の導入です。本校の生徒を見ていると、特に高2の終わりから高3にかけての学力の伸びは驚異的で、強い意志を持って勉強に取り組んだ生徒は、模擬テストの判定に関わらず志望大学に合格するケースが多々あります。それを実現するだけの風土が、本校には伝統としてあるのでしょう。ただ男子は、ついつい怠けてしまいがちで、特に中学の段階では学習時間が足りていない生徒もいます。そこで英語と数学について、1週間の授業を振り返るための時間を設けました。確認テストや課題のプリントなど、その内容や状況に応じて各教員が工夫を凝らして行い、授業の理解度を確認しています。普段の授業とは違う雰囲気なので、生徒たちは楽しみながら取り組んでおり、保護者にも好評です。

3つ目は、『滝川ファイル』です。その日に行われた授業の振り返りや16時以降の計画を記入するもので、家庭学習の基盤を作ることを目的としています。毎日ファイルに書き込むことで、それらを習慣にできれば、自分で少し先を見すえた行動ができるようになります。私は今年度1学期の始業式で、「1日の終わりに10分、その日を振り返りなさい。そして5分、明日を夢見なさい」という話をしましたが、その足がかりになればという思いもあって導入しました。担任への相談欄もあり、コミュニケーションツールとしても活用できます。従来から実施している『生活ノート』と併せてチェックしなければならないために教員は大変ですが、一人ひとりの状況把握や、その状況に応じた素早い対応にもつながる、大切なツールだと考えています。徒の才能や可能性を引き出し、伸ばしていくことではないかと考えています。

──従来型の学力にとどまらない“+ α”の部分と、その土台となる基礎的な学力、両方を重視されているのですね。

特に『リーダーの時間』は“+α”の力を養うという意味合いが強いですね。10年後の社会では外国人と意思疎通を図る機会がますます増えるであろうことを考えれば、語学力はもちろん、物事を論理的に考え、話す力が今以上に求められるようになるでしょう。『リーダーの時間』では、外国人とコミュニケーションを図るというシチュエーションで行うロールプレイなど、日本人ならではの“ 阿(あ)吽(うん)の呼吸”を前提としたやりとりでは通じないということを体感させています。
一方、教育の現場では、いくら判断力や表現力が大切とは言え、やはりそのベースとして基礎的な学力が不可欠であることを、皆があらためて実感し始めたところではないでしょうか。現代の若者は自己肯定感が低いと言われますが、自信と活力を持って前進する姿勢を培うためにも、まずは基礎的な学力が必要なのではないかと思います。
本校の教員は、そうした現状に配慮しながら、『振り返りの時間』などの新しいプログラムには、通常の授業とは別の教材研究を行ったうえで臨んでいます。通常の授業以外の場面、例えば『振り返りの時間』や個別に質問があった際に、いかに的確な言葉をもって指導できるかということが教員の勝負所ですから。始まったばかりで今は苦しい時期かもしれませんが、『新滝川教育プログラム』によって、教員のさらなる指導力向上も実現できると信じています。


 

発達段階に応じたキャリア教育が、
飛躍のきっかけに

──文化の異なる人々と協働するために必要な、相手の考えを尊重する姿勢や広い社会的視野を培ううえでは、学校という集団社会に身を置いて学ぶことが非常に大切だと感じます。

企業探訪 自分で道を切りひらくことができるよう、その基礎となる部分を身につけさせて子どもたちを送り出すことが、中等教育の使命であり、日本の未来に貢献することにつながるのではないかという思いがあります。
そこで『リーダーの時間』には、多彩なキャリア教育も用意しています。従来から行っている中2の『自分発見セミナー』はその一つ。1年間に5回、さまざまな分野で活躍する卒業生を講師として招き、働くことの意義などをわかりやすく伝えてもらっています。また、私が本校に赴任した2011 年度から始めたのが、高1の『滝川フォーラム』です。行事や部活動、勉学などでの体験を通して自分自身の生き方を考え、1600 字にまとめて発表するもので、「挫折したときに周囲にサポートしてもらったから、今後はサポートする側になりたい」といった話が聞かれました。そして高2の『企業探訪』については、「これぞキャリア教育」という自負があります。数年前に私が同行した際は、宇宙産業の一端を担う従業員18名の企業を訪れ、社長の歩んできた人生などについてお話をうかがいました。その時の社長の「人生はお金じゃない。夢だ」という言葉を聞いたとき、場の空気が一瞬にして変わりました。そして、来たときと帰るときの生徒の目の輝きや表情、足音までもがまるで違っていて、心の中で起きた“変化”を感じ取ることができたのです。
何かをきっかけに大きく変わるという時期がありますね。夢や目的を見出せれば、精いっぱい努力するようになります。そこまで導く筋道として、発達段階に応じたキャリア教育を実践することが肝要だと思っています。

<写真>高1で行われる『企業探訪』。発達段階に応じたキャリア教育が抜群の効果を生む。

 


 

グローバル社会を担う
人材の輩出を目指して

──今後、貴校の展開については、どのようにお考えでしょうか。

まずは英語教育の強化を考えています。グローバル社会においては英語力だけではダメだと言われますが、コミュニケーションツールとして最低限の英語力は必要ですし、中高時代にちんとやっているといないとでは、その後が全然違ってくるからです。その手始めとして、『TakigawaEnglish Park』という講座を始動させました。放課後に大学の留学生に来てもらい、会話をしたり、英検やTOEFLのための対策に取り組んだりします。こういう空間をもっと充実させていきたいと考えているところです。
もう一つ、来年度に導入したいと思っているのが『留学プログラム』です。最近は生徒から、留学したいという声が多く聞かれるようになりました。今年の夏休みに実施したカナダ短期留学のプログラムに、これまでの3、4倍の生徒が参加したことからも、そうした志向が高まっていることがわかります。今後は、日本の国公立大学と私立大学、海外の大学を比較検討し、自分の学びたいことを学べる大学を選ぶという傾向が強くなっていくのではないでしょうか。そうした流れにも対応できるよう、教員と一緒に、留学プログラムの開発を進めています。
その一方で、日本の有名大学に進んでほしいと願う保護者もいらっしゃることでしょう。それはごく自然な考えだと思います。生徒の要望はもちろん、保護者の思いも実現できるようなプログラムを網羅し、グローバル化社会を担うたくましい男子を育む学校を目指し、子どもたちが将来、豊かに生きていくことができるための教育を推進していきます。
また、本校の卒業生を見ていると、困ったときはお互いに助け合うなど、社会人になってからも皆本当に仲良くしていますね。生徒たちには本校で過ごす6年間を通して、そういった心の拠り所となる場や仲間を見つけてほしいと願っています。

 


06.06_029江本 博明 校長先生  PROFILE
1974 年、大阪大学卒業。大手電機メーカーに5 年間勤務した後、県立学校の教員に転身。1993 年からは兵庫県教育委員会にて14 年間、教育行政に携わった。兵庫県立鳴尾高等学校校長、兵庫県立兵庫高等学校校長、県立高等学校長協会会長等を歴任後、2011 年から現職。

(取材・文/小河砂綾  撮影/池本昇)

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