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進学通信No.55-上宮
04
9月
  • 進学通信No.55-上宮
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自学自習の習慣を育み
卒業生の著作1 , 0 0 0 冊以上と出会える

子どもの活字離れが問題視される昨今、学校図書館のあり方や意義が改めて問われています。学校図書館とは、その学校の文化を映す鑑ともいえるもの。5万冊以上の蔵書を有し、独自の取り組みを重ねている同校の図書館を取材し、館長である辻本康夫司書教諭にお話をうかがいました。

005 同校は、1890年に浄土宗を母体として創立。120年以上の歴史を誇る伝統校であり、これまで優秀な人材を多く輩出してきました。その一人が、歴史小説家の司馬遼太郎先生です。図書館には『司馬遼太郎文庫』と銘打たれたコーナーがあり、司馬先生から寄贈された著作を中心に900冊以上の蔵書を開架。司馬先生が亡くなられた今も、奥様を通じて寄贈が続いています。そのきっかけを作ったのが、辻本館長です。

▲図書館館長の辻本康夫司書教諭。1976(昭和51)年より上宮高等学校の図書館に勤務。
「本校の図書館には『紀念文庫』と名付けられた約2400冊の江戸時代の貴重な古典籍が保存されています。30年以上前になりますが、その目録の草稿を作成した際に、司馬先生にもご覧いただこうと、郵送させていただいたんです。すると後日、先生からていねいなお返事が。そこには『さすが上宮です』というおほめの言葉とともに、『著書を寄贈させて欲しい』との申し出が記されていたのです」

017▲旧制上宮中学校で実際に使用されていた貴重な教育掛け軸を、世界史・日本史・地図を中心に100本以上所蔵。写真は昭和初期の上宮を中心とした鳥瞰図。教育掛け軸や紀念文庫は毎年文化祭に展示され、保護者を含む一般来訪者も見ることができる。

また同校図書館では、『上宮文庫』として、国内外の幅広い分野で活躍する卒業生の著作も収集し、展示紹介もしています。仏師で東京芸術大学名誉教授であった西村公朝氏、 有機ELの国家プロジェクトリーダーである城戸淳二氏、推理小説家の有栖川有栖氏、メジャーリーグで投手として活躍している黒田博樹氏の著書など、蔵書数は250冊を超えます。
「入学時のオリエンテーションで生徒には、『将来、君たちが本を出したら、図書館に置くからね』と冗談めかして伝えます。同校の生徒である誇りと、モチベーションを抱いてほしいと思うからです」
事実、生徒にとって、卒業生の著書と出会える図書館のこのコーナーは、「論より証拠」という説得力を持つもの。中学生でも司馬遼太郎先生の著作を手に取る生徒が、少なくないといいます。
また同校では昨年度から、中1生が『司馬遼太郎記念館』を訪問する取り組みを実施。偉大な先輩から大いに刺激を受けてほしいと考えているのです。

 

 

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(▲写真左)司馬遼太郎先生が「さすが上宮」と感嘆した『紀念文庫』は、明治維新後に散逸しかけた貴重な江戸時代の古典籍を、明治30年代に初代学長が収集したもの。中には、長州藩の藩校・明倫館の蔵書であった『大日本史』も。尊王攘夷の幕末思想に大いに影響を与えた書が、長州藩にあったことを思うと感慨深い。また、徳川家の系図『柳営譜略』、華道の最大流派の一つである未生流の免許皆伝の写本、福沢諭吉が西洋社会を事細かに紹介した書籍など、大学にも匹敵するラインナップがそろう。
(▲写真右)図書館では卒業生の著作を『上宮文庫』として収集・展示。また、司馬先生から寄贈された蔵書を集めたコーナー『司馬遼太郎文庫』も。


001一方で、図書館は自学自習の場としても定着しています。平日17時から20時を自習時間と定め、利用した生徒には『図書館マイレージ』を進呈しています。
▲自習時間に図書館を利用すると、ポイントが付加される『図書館マイレージ』。この制度に登録した生徒の多くが年間100日以上図書館へ。中には300日以上も利用する生徒も。

「これは、自学自習の習慣を身につける動機づけとして始めた取り組みです。希望制ではありますが、中学生は18時、高校生は19時まで勉強すると、1ポイントが進呈されます。1年間で100ポイント貯めると賞状と記念品をプレゼントしています。ですから生徒の多くが、ゲーム感覚で100ポイント達成を目指すうちに、週3回以上は図書館で勉強するようになるんですね。すると自然に成績も上がる。定期考査の時期になると、図書館には百数十人の生徒が勉強に訪れます。机が足りず、視聴覚室や控えの部屋を開放するほどです」
また、中学3年間の『朝読書』にも対応した取り組みが。何を読めばよいのかわからない中1生に向けて、偉人の伝記や自然科学・心理学など関心を持ってもらいやすい書籍を取りそろえています。
調べ学習が重視される中、生徒に利用してもらいやすい図書館のあり方や取り組みが問われている昨今ですが、同校では、30年以上も前から生徒に親しまれる図書館づくりを実践しているのです。
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(▲写真左)中1生に向けた『朝読書用図書』のコーナー。
(▲写真右)6人掛けの大きな机を完備。前方・左右に仕切り板のあるキャレルデスクも10台用意。ノートパソコンも10台あり、調べ学習に利用できる。ここで自習する先輩の姿を見ながら、生徒たちは成長していく。

(取材・文/蔵 麻子  撮影/吉村竜也)

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