What's new / 進学通信掲載記事 / 進学通信No.55-「教・育・問・答」四天王寺 鳩山校長先生

進学通信No.55-「教・育・問・答」四天王寺 鳩山校長先生
14
8月
  • 進学通信No.55-「教・育・問・答」四天王寺 鳩山校長先生
  • No.55 . 四天王寺 . 教育問答 . 進学通信 .
mondou_sitennouji

仏教の精神に基づいた真の心の教育を実践し
世界に貢献できる女性を育成

西暦593年、平和国家の実現と人々の安穏を願って建立された四天王寺を設置母体とする同校。医療分野に多くの人材を輩出してきたことで広く知られ、近年の国公立大学医学部医学科への進学実績は全国で10位以内、女子校では全国トップを誇ります。“慈悲救済を使命として生きる人格者の育成”という建学の精神を体現し続ける同校の教育や中学受験に臨む心得などについて、校長の鳩山文雄先生にお話をうかがいました。


私学教育の意義は
建学の精神に支えられた人間教育にこそある

──まず、貴校の教育理念についてお聞かせください。

本校の歴史は大正十一年に和宗総本山四天王寺を設置母体として創立されました。聖徳太子さまが説かれた“和のご精神”を礎に、世界に貢献できる女性の育成を悲願として教育を行っています。仏教精神に基づき、互いに助け合い、すべての生命や自然の恵みに感謝する心を涵養することにより、穏やかで深い人間性を備え、生徒が希望する世界に雄飛 し得る学力を持ち合わせた人材の育成に努めています。
毎朝の朝拝では、生徒と教員が『十七条憲法』を基とした学園訓を斉唱し、その実践を心がけています。全クラス週1時間の仏教の授業、仏教界で活躍されている先生方による年2回の仏教講演、毎週月曜朝の校長講話なども実施し、人間教育を徹底しています。
学校行事も、幅広い人間教育に欠かすことのできない要素です。仏教行事をはじめ、体育祭や文化祭、合唱コンクール、女子校ならではの創作ダンス発表会、夏季合宿、希望者制の高校林間学舎、スキー教室など、多彩な行事を通じて、団結力や深い友情、人とのつながりを学んでいます。

_MG_9131──東日本大震災直後から、復興支援にも継続的に取り組んでおられるとうかがっております。  生徒会とインターアクトクラブが中心となり、入学式や文化祭などを通して義援金を募っており、現在までで約270 万円の義援金が集まりました。“仏の慈悲の心”を学び、育み、実践する場となっています。
また平成23年度から毎年冬に、世界中の人々と慈悲の心を持って共生していこうという気持ちを育むことを目的とし、大震災からの復興を願う全校芸術鑑賞『共生きの集い』を実施しています。これは被災された方や復興支援に携わっている方を招き、体験談などをお聴きするという集いです。3回目となる今年は、宮城県女川町で被災者に生活情報を伝える臨時災害放送局『女川さいがいFM』のプロデューサーの方、パーソナリティの方による講演と、国内外で復興支援コンサートを続けている津軽三味線とドラムのユニット『天地人』の演奏をお聴きしました。
「物豊かにして心貧しい」と言われる現代社会において、私学教育の意義は、学校独自の建学の精神に支えられた人間教育にこそあるのではないでしょうか。今後もこうした取り組みを通じて宗教的・倫理的な心を育てることが、人間力を高めること、生き方を見出すこと、そして、真に心の豊かな人間の育成につながると信じています。


学習と体育・文化活動を両輪とする教育を通して
個々の可能性を伸ばす

──中等教育の役割については、どのようにお考えでしょうか。

生徒の才能や可能性を引き出し、伸ばしていくことではないかと考えています。
本校が、進学を実現するための学習と、スポーツ・文化を軸とした体育・文化活動を教育の両輪としているのは、そうした思いのあらわれの一つです。卓球部、体操部、バドミントン部、ハンドボール部などはインターハイの常連で、中でも卓球部は40年連続・計58回、体操部も8年連続・計51回の出場実績を誇ります。文化部でも軽音楽部、放送部などを始め、すばらしい賞をいただいています。個人で囲碁の全国大会にも出場していて、2年連続で優勝している生徒も。オリンピックに出場した卒業生はこれまでに25名。ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得した卓球の石川佳純選手も、その一人です。

──一人ひとりの生徒が、目標・目的をもって学校生活を送っているのですね。

一人ひとりが相応しいキャリアを形成するために必要な意欲や姿勢、能力を育てるためのキャリア教育も大事にしています。
たとえば平成25年度は、大学の研究室訪問、教授による出張講義などのほか、東大生や京大生、神戸大学で助教を務めるOG に、大学や研究の魅力を語ってもらう機会も設けました。本校は国公立大学の医学部を志望する生徒が多いため、医学への関心を高める講演も数多く実施しています。

──学習面については、どのような点を重視されていますか。

「学問の目的は人格の完成にある」と言われます。とりわけ中等教育においては、その途上にある生徒が本当の意味で自立できるよう、人と人とのふれ合いを通じて独りよがりの考えを取り除き、学問に対する真摯な姿勢を育むことが大切です。
自立するためには、失敗をしても経験を積むことが重要ですが、単にそれをくり返しているだけでは本当の意味で自立することはできません。特に中1、中2の時期は、「こういう失敗をしたときには、どうすればいいのか」ということを教えることが肝要なのです。
その実践の一つとして、添削指導が挙げられます。生徒は「完璧だ」という自信を持って答案を提出します。これはいわば、自立するための出発点です。ところがその答案は、大学受験の採点などの観点からは、まだまだ不十分。つまり“失敗”です。それをプロである教員が修正し、完璧な答案を作ることができるように導いていきます。
授業においては、単にくり返して反復するだけではなく、自ら思考することを重視して展開していることも特徴の一つです。思考する中で生まれた疑問を解決するための場として、休憩時間や放課後に質問を受けつけるための『学習プラザ』や『生徒学習指導室』を設けています。
また、本校では基本的に中3で高1の学習内容を終えますが、決して無理をさせることはありません。生徒の状況に応じて授業進度を調整し、確実な定着を図ります。高校受験によって分断されることなく、自由度の高いカリキュラム編成のもと、6カ年一貫教育という一つの流れの中で人間・学力の形成に取り組める。その中高一貫教育の大きなメリットを最大限に活かした教育を実践しています。


中学受験は親子の絆ができれば大成功

──先生はご子息の中学受験を経験されたとのことですが、教育者として、また一保護者として、中学受験に臨むうえでのアドバイスをいただけますか。

初等教育における一番大きな課題は、まだ自分では物事を判断できない子どもを、いかにうまくリードしてあげられるか、という点にあります。そのうえで大切なことは、“子どもと一緒に走る”ことです。まずは、いい意味でのレールを敷いてあげてください。たとえば塾ではたくさんの宿題を出されますから、子どもは、いつまでにどれだけやればよいのか、わからなくなってしまいます。そんなとき、宿題一覧表などを作ってあげるのは親の役目。「一緒に走ってくれているんだ」ということを、わからせることが重要です。そして声をかける際には、「勉強しなさい」ではなく、「この課題はできたのかな」など、具体的であるほうがよいと思います。
次に、理解できていないポイントを見つけ、わかるまで復習させることです。テストは到達度を確認するものですから、親は点数を意識してはいけません。実力アップを図るためには、その次の段階、すなわち、本校の添削指導と同様に、“間違い直し”をさせることが大事です。「間違ったところは直した?」「間違ったところでわからないところはなかった?」と、全て理解できるまでチェックをしてあげてください。
また集団教育、特に実験などでは、授業の中で理解し切れないこともあるかもしれません。そのフォローも、“一緒に走る”ことの一つです。例えば魚の解剖を習ってきたら、魚を買ってきて、一緒に解剖してみてはいかがでしょうか。
ここで挙げた例はすべて、私と妻が息子にしてきたことです。こうした接し方をしていると、テストを隠すようなことはありませんし、親への感謝の気持ちも自然と芽生え、反抗期を上手に乗り切ることができます。
中学受験は、親子のしっかりとした絆ができれば大成功、というのが私の持論です。親への承認欲求が最も高まる時期でもありますから、否定するような発言は厳禁。私は息子の受験の際、御仏が一番相応しい学びの場を与えてくれると信じ、学校名などにこだわることはしませんでした。受験生の保護者の方にも、ぜひそう信じ、どのような結果も喜んであげてほしいと思います。

_MG_9154──中学受験に向けて学校を選ぶ際、押さえるべきポイントについてもお教えください。  その学校の教育方針が、子どもの性格に合っているか否かです。学校説明会には必ず足を運んでください。説明を聞くと、インスピレーションを感じる部分があるはずです。親の直観に間違いはありません。先生方の誠実度・熱心度なども、説明を聞いていればわかるものです。候補を2、3校に絞ったら、それらの説明会には、子どもを連れて行くのがよいかと思います。親が志望校を決めてしまうと、例えば入学後、何かうまくいかないことがあったときに、親のせいにしかねません。最終的には子どもに選ばせてあげるのがベストだと思います。
そして入学後は、先述の失敗の経験を重ねながら自立していく時期、言い換えれば、親が子離れをする時期に入ります。見ているだけというのはもどかしいものですが、手を出してしまうと伸びません。とはいえ、急に突き放すと子どもが戸惑ってしまいますから、上手に、徐々に、見守るというスタンスを確立してください。


新コース・新設校を原動力にさらなる発展を目指す

──平成26年度から、中学校に『医志コース』を、高等学校には『理数コース』を新設されたほか、共学校の『四天王寺学園中学校』が開校されました。学園全体の、たゆまぬ進化を目指す姿勢が伝わってくるようです。

『医志コース』は、“慈悲救済の心”の教育に今まで以上に力を入れ、医療に貢献できる人として心得ておくべきことを6年間かけてじっくり育てたいとの思いから設置しました。医学や薬学などでの社会貢献は、四天王寺創建当時から受け継がれてきた聖徳太子さまの精神そのもの。さまざまな取り組みを通じて、国公立大学医学部への現役合格を目指す生徒をサポートしていきます。もちろん『英数コース』からも、これまでどおり医
学部に進学する生徒が多数出ることでしょう。全学を挙げて仏教に根差した心の教育をしていますので、今までの卒業生同様、心のある良い医師になってくれると信じています。
医歯薬に限らず、全生徒の進路の希望の実現が本校の悲願です。多彩なコース制の導入によって、また、四天王寺学園中学校とともに切磋琢磨することを通じて、本校教育をさらに充実・発展させ、さまざまな分野へ信念あるリーダーを輩出していきたいと考えています。


_MG_9170鳩山 文雄 校長先生  PROFILE
平成4 年、四天王寺高等学校・四天王寺中学校に数学教諭として奉職。学年主任、入試対策部部長を経て、平成23 年から同高等学校教頭に就任。平成25 年度、副校長を務めた後、平成26 年4 月より現職。

(取材・文/小河砂綾  撮影/テラサカトモコ)

kininaru

koushikiwebhe  kihonjouhouhe

学校情報